(93)気鋭の劇団とムーミン人形劇

ninniヴィールスのムーミン人形劇はこれが舞台の全体。

新しいムーミンの人形劇が誕生した。しかも気鋭の(スウェーデン語)劇団、ヴィールスシアターの制作だ。ヴィールスは先日シアター・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。そんな劇団がムーミン人形劇をするという。しかもテレビドラマなどでも活躍する俳優、ペッレ・ヘイッキラが一人で人形を操るようだとか、なんだか面白そうな噂が事前にあちこちから入ってきた。

「そもそものきっかけは、舞台人だけれど、なんとか昼間働けるようにならないかなということだったんですよ」とペッレ。二人の子どもの親として、子どもが二人とも家にいる時間には家にいたかったのだそうだ。

昼間働く方法は…と考えたときに浮かんできたのが、移動劇場として保育園や小学校を訪問しながら身近に舞台を楽しんでもらうことだったという。ただし気鋭の劇団らしく、斬新な方法でやりたいと考えた。ヴィールスらしいデザインにもこだわりのある美しい舞台を、どうしたら持ち歩けるか。それで人形劇が面白いということになった。ペッレに人形劇の経験はない。でも、ヴィールスらしく、そして自分らしい舞台をするために欠かせないと思い、人形劇の特訓を受けてムーミンを上演することにした。ストーリーは『見えない子ども』、ニンニのお話に決めた。

「とにかく美しいストーリーだと思ったから。そしてメランコリーな側面もある」

かくして舞台装置は美しく、シンプルなデザインとなった。例えば背後の壁。台所の壁から海の水平線にまでコロコロと変わる。照明とちょっとした音の使用はあるものの、効果音のほとんどはペッレが担当する。それが子どもたちをひきつける要因にもなっていて、ヴィールスらしいシンプルで美しい舞台美術であるにも関わらず、笑いが絶えない。

人形劇が終わると、種明かしの時間がある。人形の使いかた、人形のトリックを見せてくれて、いよいよストーリーについて子どもたちと対話する。多くの子どもたちに経験があるだろう「私のことが見えていないのかな」と思う寂しい経験のこと、自分の思いをどうやって伝えればいいのか、怒ることは笑うことと同時にとても大切なことだとういこと、そして生きることを楽しむことなど。子どもたちは少しずつ色んなことを話してくれる。

この人形劇はスウェーデン語だけでなくフィンランド語でも上演してくれる。上演回数は50回を超えた。対話を通じて自分のことを振り返った観客は、最後、ミイと握手して舞台とお別れする。日常に戻るとき、前より少しだけたくましくなれたような、そんな気がするのだった。


森下圭子

mamma 姿の見えないニンニの特効薬について調べているムーミンママ。

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