(21)ヤンソンの島 その2

 

島の小屋にはいまでも、トーベたちが暮らしていた頃の様子があちこちに刻み込まれている。調味料の棚に組み込まれた木の箱は、どこぞの島に流れついたお酒の箱を拾ってきたんだな。島の岩にうちあげられていたと思われる生き物の白骨もある。鳥の卵のような丸っこい石は、近くのカモメの島で見つけたものかも。貝をよせあつめて作った小箱、壁に貼られた黄ばんだ新聞の切り抜きも、きれいに当時のままの姿で残っている。天井からはお手製の吊り輪がぶらり。創作活動の合間に、これで体をほぐしていたんだろうな。水もなく電気もない小屋のキッチンは小じんまりとしているけれど、使いやすそうな工夫がいっぱい。壁面の四方に窓がありながらも、本好きには欠かせない本棚が壁の一角をたっぷり使ってしつらえてある。

夏だから楽しみたい生活のありかた、暮らしながら工夫されていった心地よさが、勝手よく小さな空間の中いっぱいに収められている。トーベは石を使った細工が得意で、トゥーリッキは木を使っていろんなものを器用にこしらえていったのだそうだ。材料はわざわざ買ってきたものでなく、家を建てるときにくりぬいた岩の砕石やら流木などを丁寧に使っている。だからか彼女たちが去ってから加えられた真新しいモノたちは、小屋の中をぱっと見ただけでもわかるような気がする。

新たなものが加わったりしてはいるけれど、なんかいいなあと思うのは、彼女たちの生活が感じられる小物を含め、ここを訪れた人たちみんながこの小屋を大切にしてきていること。ただしネズミたちには要注意だ。ある年は小屋に残された食べ物のせいで、秋から冬にかけてネズミたちにさんざん小屋を荒らされたことがあったらしい。

そういえば、岩に打ち付けられたごつい鎖。それを握って海にお尻を突き出して用をたしていたという、その「大自然トイレ」の鎖がほどんと切れてなくなってしまっていた。これはネズミ…じゃないですね。

森下圭子

数多くの鍋やフライパン、蓋といい、この収納アイデアに感激してしまった。灰色の靴下は昔からこの小屋にあるもの。真夏でも毛糸の靴下が大活躍のフィンランド、島の夜。
トーベが作った階段。色や形の組み合わせ、さすがトーベという感じ。びっくりするのは、それが階段だと気づかせない按配になっていること。ずっと岩の段を使って歩いてる感覚でいた。