(2)がんばれヘムレンさん

 
1月になるとサンタ報告に来る人たちがムーミンショップにやってくる。サンタにもらったムーミンのあれこれ。親がわざわざ「○○の人気はどんなものでしたか?」と確認しに来ることもある。それが完売だと分かると、そばに立っている子供たちの鼻の穴も大きく開いて得意満面だ。サンタの手をつかんでムーミンショップまでやってきて、「僕はこれが欲しいんだよ!」と主張していた男の子も、クリスマスはニョロニョロで遊んでたはずだ。

こんなムーミンあんなムーミンで熱く語る人々がやってくる中、たまにとてもマニアックな問い合わせがある。存在していないのに「私は絶対この目でみたことがある!」と頑として譲らない「ご先祖さまマグカップ」だとか、ピンクの地で警官が描かれているパジャマが欲しいのだけど…などなど。アニメを繰り返し観ていたり絵本を何度も読んでいるうちに、家庭内で盛り上がる「旬のキャラ」というのが誕生してしまうのだろうか。

お願い、収集家のヘムレンさんを旬にしてやって。

ムーミンのチョコエッグから連続4回ヘムレンさん登場でしょげた私が言うのもなんだが、ヘムレンさん、いいではないですか。映画『かもめ食堂』で登場するマグカップにヘムレンさんが選ばれた時ドキドキしていた私ですが、ヘムレンさんいいと思うんですよ。チョコエッグ6個買った全てがヘムレンさんで「ひょっとしてヘムレンさんしかいないとか?」とたずねてきた人がいて、心底かわいそうと思っていしまいましたが、ヘムレンさんって味わい深いじゃないですか。

おばあさんがプリントアウトしたメールを持ってショップへやってきた日のこと。ムーミンマグを集めはじめたという娘さんのリクエストで、メールにはすでに持っているマグがリストになっていた。その後大切なことを忘れてたと電話があったのだろう、「ヘムレンさんはいらない!」とやたらと大きな文字で書きなぐられていた…はぁ。

実はヘムレンさんって、トーベ・ヤンソンの一番下の弟ラッセ(ラルス・ヤンソン)がかなり影響しているんじゃないかな…と思う節がある。彼が小さな頃から夏の島暮らしでやっていたのは蝶の採集なのだ。コミックを手がけていたラッセですよ、アニメをチェックしてらした方ですよ。ヘムレンさんに注目してみたくなった?

自ら積極的にヘムレンさんを選んでゆく子がたまにいるのだけれど、とても賢い子に見えてしまう。「うちの子ヘムレン好きでね」とやってくるお客さんも、ちょっと誇らし気である。知的印象をアップさせたかったらヘムレンさんですね。

先月中旬からフィンランドの国立劇場でムーミン劇が登場している。来月はそのレポートを。ヘムレンさん、いるかな。

森下圭子

ジンジャークッキーでムーミンハウス。味にこだわる人が集うハカニエミ市場。ビジュアルはいいのだろうか…これで。何度みても笑いがこみあげてくる。
ムーミンショップだけで扱っている貴重品入れ。最近フィンランドでニョロニョロ人気が急上昇中。