(4)ムーミンをとりまく熱い視線

ムーミンショップにいると、すでに製造されていない商品を求め、途方に暮れた迷える人々がやってくる。この1年くらい急増しているなっていうのが個人的な印象。ムーミンショップには、もう製造されていないものがわずかに残っていたりするので、確かに目のつけどころとしてはいいのですが…それでも無いものはない。すると商品がネット上で争奪戦になってしまう。

フィンランドのネットオークションで激しいのがアラビアのマグカップ。テレビドラマを観ていると、必ずといっていいくらいムーミンマグが登場している。ちゃっかり。キッチンのシーンともなると、背後の棚にムーミンがずらりとか。実際にズラリな家庭が多いようだ。テレビの影響なのか、現実を反映させてテレビでこうなるのかはわからない。とにかく今はドラマの家庭でも現実の家庭でもムーミンマグが見事に並んでいることが多い。ムーミンショップには家族連れで新しいムーミンマグが出るごとに買っていかれる常連さんや、お祝いごとにムーミンマグを追加されていくお客さん。知らないうちにムーミンマグのコレクターになってしまいましたという人もいるだろう。最近は新しいマグの発売日を入念にチェックしている人もかなりなもので、今は出たばかりのニョロニョロが大人気。

今あるものはとりあえず急いで買っておけ、でいいわけだけど、そうでないものもある。すでに製造を中止している90年代前半のマグは数百ユーロ(数万円)でフィンランドのネットオークションに登場している。群を抜いてしまっているのはファッツェル社が限定400で出したムーミンマグ。先日ついに1000ユーロ(16万円くらい)にまで跳ね上がったという情報を小耳に挟んでしまった。どうしよう…実は私、これが唯一自分で買ったムーミンマグだったりします。特に私のは茶渋つきなのがチャームポイントと開き直りたいくらいだ。まさかこんなことになるとは想像だにしていなかった。こうやっておろおろしているうちに、コレクターたちの需要は終わっているんだろうな。

フィンランドの人はクールな人が多いと思いきや、こんな風にコレクター心に火をつけられ油が注がれることがあるんだ。ちょっと意外で驚いている。そうなると物心ついたころから熱心にムーミンのフィギュアを集めている子供たちの将来はいかに。ちなみにムーミンショップのスタッフたちは、私を除いて皆さん熱心にムーミンマグを集めてらっしゃいます。

 

森下圭子

トーベ・ヤンソンがファッツェル社のクリスマス広告用に手がけたポスター画をもとにした限定400のマグ。売られた当時、存在を知る人が少なくて、実は年越ししても売れ残っていたというのに。
3月になって高らかな鳥の歌声があちこちから聞こえてくるようになった。散歩も楽しい。そして見つけた街角ムーミン。ものすごくひっそりしたところにいる。近くには海もある。