(9)不思議な大会

フィンランドには不思議な大会がたくさん。エアギターは日本でも知られるようになったか。ときに嫁をかついで走ってみたり、はたまた極限のようなアッツアツのサウナの中でひたすら我慢してみたり。どれもこれも「世界一」を決める大会で、参加している本人たちは真剣だったりするのだ。
 さて、トーベ・ヤンソンが夏を過ごした群島の地域、ペッリンゲ。ありましたとも、ここにもまた不思議な大会が。「斧投げ」です、斧を投げる大会。フィンランドではここと、それからペッリンゲとは何の繋がりもなさそうな小さな町で斧投げに燃えているのだそうだ。

 斧投げというのは、ただ斧を投げるだけじゃない。丸太でつくった的があって、的(マト)の中央に向かって投げるのだ。ダーツをごつくした感じといえばいいかな。木でできた的だから海の水に一晩はしっかり浸しておいて、途中で割れたりなんかしないよう仕込んでおく。この板にペンキでぐるぐると輪をほどこして、そして大木にくくりつける。あとは遠くから、この的めがけて斧を刺す要領で投げる。ぐるんぐるん。2回転するようにして、柄の部分が下にくるように的に突き刺すのがコツなんだそうだ。いや、その前に私にはいろんなコツが必要なのだけど…。

 ヤンソン家の人々はこれがやたらと上手だ。トーベの姪にあたるペル・ウーロフ・ヤンソンの娘インゲの技は、結婚して何十年と斧投げの技を磨いているご主人でも歯がたたないそうだ。そういえば、ドキュメンタリーでトーベが丸太を切っている姿や、薪を割っている様子ってほれぼれするくらい見事だった。

 斧投げはまだ地域をあげて熱心にやっているのが2箇所だけっていうから道のりとしては遠いかもしれないけれど、そのうち「世界大会」なんて名乗っていそうな気がしないでもない。

 ところであっという間にまたムーミンワールドが冬眠をまた迎えようとしている。いよいよフィンランドでは新学期がはじまる。もう夏休みは終わりというのに、8月になって真夏日が続いてしまっている。歯痒い思いをしている人があちこちにいるんだろうな。


森下圭子

 

冬眠直前のムーミンワールド。30℃になろうという日だったけど、ムーミンもフローレンも元気そうだった。お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんの方がバテ気味だったか。
タンペレにあるムーミン谷博物館前の像。この子は見るアングルで表情があれこれ変わる。この目かわいすぎます。思わず「かわいい」を連発する私、38歳。