(12)まどろみの中のムーミン

私がフィンランドにやってきた94年。その頃は、周囲でムーミンを読破している人があまりいなくて不安になった。これじゃあ研究というかフィンランドの人が読むムーミンのことなんて全然聞けないじゃない…。当時、アニメのおかげでムーミンの知名度はあり、ムーミングッズも人気だった。なのに原作を読んでいる大人の少ないことといったら。
ところがここ数年、本当にムーミンに詳しい大人が増えている。フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキが、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した作品『過去のない男』で主人公を演じたマルック・ペルトラなど「ムーミンは俺、悪いけどかなり詳しいよ」というくらいの自信だ。彼のように、子供が寝る前に読んできかせた本でムーミンシリーズが何度も登場する大人が増えているのだろうか。昼は一緒にアニメを見たりして、夜になると子供にせがまれ、時には自主的にムーミンの童話を読み聞かせる。

布団にもぐってぬくぬくしながら傍らでムーミンを読んでもらう…いいなあ、こんなまどろみ。陸上の世界記録を延々と聞かされてうつらうつらしていくのとは、眠りの質まで違ってきそうだ。

子供がすやすやと眠りにつくと、親は本にしおりをはさんで、次の晩にムーミンの続きを読みきかせる。最近ムーミンの朗読CDというものを買ってみた。ところが、これでうとうととしていると、知らないうちにどんどん先に進んで、ヘタすると延々とリピートしていてどこまでいってどうなってんだか全然わからなくなってしまう。いつだって暗いから、目が覚めても朝だか夕方だかわらかず、はては曜日までわからなくなって、休みの日に昼寝なんかしちゃった夕方の6時とかに「朝だよ、遅刻しちゃうよ」と必死で夫をゆさぶり起こそうとしてみたり(冬はいつだって眠く、うちは夫婦揃って休みの日に寝て起きてを繰り返している)。太陽がいっぱい青空いっぱいの南の地でゆっくりしたい気分だ。

なーんていっておきながら、ムーミン朗読CDで一日中まどろんでいる冬の日々というのもなかなかに味わい深いな、とは思っているのだけれど。


森下圭子

 

ただでさえキャラクターの名前があやふやだった人たちはどうすればいいのか。こんなフィギュアまで登場。エンマ劇場のムーミンたち。
ムーミンショップで人気の携帯ストラップ、キーホルダー、マグネットのシリーズに新しいキャラクターが登場。ヘムレンさんがこっそりモデルチェンジをしていました。