(122)はだかんぼうの日常

かつて夏は裸で遊びまわった島の子ら。今ではその姿を見ることはほとんどないけれど、当時のままの景色はあちこちに残っている。

トーベ・ヤンソンが家族ぐるみで親しくしていたグスタフション一家のアルバムを見せていただいた。グスタフション一家とは、ヤンソン一家が群島地域ペッリンゲで夏を暮らすようになったきっかけでもある。グスタフションの家族は母屋をヤンソン家に貸し、自分たちはそばに建てた離れの小屋で生活し、夏はお互いの子供たちが一緒に遊び、ときには一緒にいたずらもし、海へ冒険に出、島へピクニックに行ったりもした。

アルバムにはトーベの次の世代の子供たちの夏の様子が収められていた。海辺で、森で、庭で、あちこちで遊ぶ姿の楽しそうなこと。ページをめくるうち、つい笑ってしまったのだけれど、写真の多くが見事にすっぱだかなのだ。

「まただ!」というと、カイさんが一緒になって笑いだした。アルバムの中にいる裸の子のひとりはカイさん。73歳のカイさんは当時のことを思い出して話してくれた。

「たとえば朝起きて庭でヤンソン家の子供が歯を磨いてたとするでしょ。おーい!遊ぶぞ!って、見かけたらすぐに遊びに誘うんです」。昔そうしていたように、二階の窓から身を乗り出して遊びに誘う様子を再現しながら、話は続いた。

「向こうはわかった!ちょっと待ってて!っていって、そそくさと家に入っていって。パジャマを脱いで裸で戻ってくるんだよ。寝るときはパジャマを着てるのに、外で遊ぶのは裸。昼間ははだか。とにかくいっつも裸で」。

それってムーミンじゃないですか!寝るときはパジャマを着ているムーミンたち。でも普段は裸。ムーミンが気になりだしてあれこれチェックしていると、この話題に行き当たることもあるかと思う。泳ぐときもそう。ふだんは裸なのに、泳ぐとなると突然水着を着ていたりするのだ。

なんとシュールなと思っていたけれど、なんてことはない、ペッリンゲの島の子たちの標準仕様だったのだ。島も海辺も森も、ペッリンゲの風景は、ムーミンの中に出てくる挿絵に次々と出会う思いなのだけれど、まさかこんな習慣までが描きこまれていたなんて。ひょんなことからムーミンの裏話に出会ったようで何とも嬉しい。

森下圭子

フィンランドのムーミンマグコレクターたちのあいだではムールラ社のホウロウマグも人気。こちらは本社ショップ限定のメタリックなホウロウマグ。