(26)冬眠中の景色

 

ムーミン谷はひっそりしている季節。いままだムーミンたちは冬眠している。フィンランドにいると、冬がくるたび「ムーミン、冬眠してあなたたち大正解だよ」と思う。フィンランドの人たちは太陽が恋しくてアフリカやら東南アジアにまで行ってしまうほど、冬の闇がちの日々は苦手だ。冬の大半がどんよりした日で眠いことだるいこと。

ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンは冬が苦手だったそうだ。すぐ下の弟さんペールウロフは森の中をクロスカントリースキーしたり、月明かりだけを頼りに親子3代スキーハイキング、なんてことをして楽しんでいるようだけど、トーベからはそんな冬のお楽しみを聞かない。おまけに彼女の暮らしていたアトリエは、暖がとれるのが玄関口の小さなリビングにあったストーブひとつ。天井の高いアトリエ部分は暖がない上に、外からの冷気が大きな窓を伝って入ってきて、それはそれは大変な寒さだったそうだ。細身のトーベが重ね着でもっこもこになっていた姿を当時の彼女を知る皆は、よく覚えている。

トーベが夏を過ごしていた群島地域ペッリンゲ。『ムーミン谷の11月』を執筆するために、彼女は一度だけ、ペッリンゲで冬を過ごした。子供時代に夏の家として借りていたグスタフションさん宅の2階。そこの小さな部屋で過ごした冬。窓の前に小さなテーブルを置き、窓から森の様子を眺めた。部屋は小さくて、あとはベッドくらいしかない。部屋のすぐそばにはグスタフションさんとこで使われなくなった古い物やヤンソン一家が残していった絵などが雑然と置かれた物置部屋がある。そこにはトーベが幼い頃に書いたペッリンゲの地図なんかもあって、大きなその地図には、ムーミン谷を思い出させるような場面もちりばめられていた。グスタフションさんのお話だと、トーベは冬の間も森の中を散歩していたという。いっぱい重ね着したトーベが森の中を歩く姿…そのゆったりした感じ、あちこちでたくさん立ち止まったり道草をくっていそうなテンポ…だから、『ムーミン谷の11月』が生まれたんだろうな。

冬の森を活動の場にしている人たちはびっくりするくらい元気だ。狩りの人もスキーの人も。森に囲まれた湖の上はスキーのほかにスケートの人もいる。釣りの人など、凍った湖の氷の上でがんがん焚き火をたいているのだ。逆に、そんな激しさとは無縁に普通に散歩しようとすると、だんだん寒さで頭が働かなくなったり、同時に眠さが増していったり、夏の散歩とは全然違って、どんどん静かになっていく感じがする。森の中を散歩し、冬の森を眺めている…そんな中で一冊の作品を書き上げる精神力。ゆっくりと散歩しながらモノを見て記憶に刻み込む、冷静に冬の景色の細かいところを脳裏に記録していくとか、すごい。やっぱり凄い。

一週間ほど雲ひとつないような青空に恵まれていたせいか、厚い雲のどんよりした日々に戻ってみると、前以上に眠さやだるい感じが強くなっているような気がする。ああ、冬眠したいっ。

 

森下圭子

久しぶりに後先考えずにすぐレジにもっていってました。ソファのサイドテーブルになりそうな大きな丸トレイも入る予定。スウェーデンで作られているこのグッズ、フィンランドでは今のところムーミンショップでのみ取り扱っています。
ついにフィンランドにもコースター文化が?もとはコースターですが、飾りとしてアレンジするつもり、なんていう話も聞きます。インテリアの工夫、フィンランドの人は上手なので、是非そのアレンジを見せていただきたいものです。