(6)ムーミンになっちゃった日

友人が番号案内でムーミンショップの電話番号を問い合わせたら、いきなりナーンタリの電話に繋がれてしまったらしい。ナーンタリのムーミンワールドはまだ冬眠中である。お店も安らかにお休みのことだろう。

ムーミンワールドはムーミンファンじゃなくったって、フィンランドに住んでいれば誰もが知っている。ヘルシンキのムーミンショップにいると、夏の間は一緒にいる子供をさしおいて大人がムーミンワールドを語りたおす。スニフを「スナフキン」と呼んじゃうような人が、ナマのムーミン一家とその仲間たちにご対面して、心に火がついてしまうのだろうか。

数年前に全国紙が「ムーミンの一日」と題した大きなルポをやった。ムーミンワールドでムーミンになって一日過ごした記者の様子。これが記者たちの心に火をつけてしまったらしい。連日のようにムーミンになりたい記者たちがムーミンワールドにお願いしてくるそうだ。残念だけど、もうムーミンになれる記者は生まれないようだ。それくらい難しくて繊細な世界なのです、きっとね。

ムーミンになると、それはそれは今まで自分が聞いたことのない甘い言葉が自分に向けられていて息苦しい被り物の中でメロメロになってしまう。「大好き!」「もうずっと会いたかったの」とか…。お腹にぴたっとくっついた感触、子供にまぎれて一緒にムーミンに抱きつこうとして鼻にゴツリとぶつかってくる大人。視界が極度に悪いために全然見えてないけれど、なんだか愛されている感触がじわじわと伝わってくる。ムーミンから離れられなくなってしまって、ムーミンの手をずっと握っている子がいたら、一緒に踊っちゃったりしよう。愛情表現が不器用なフィンランド男児と結婚していると、舞い上がったまま降りてこれない体験になってしまう。

それにしても、ムーミン童話を繰り返し読んでいながら、フローレンのアンクレットがどっちの足についてたか全然覚えていなくてドキリでした。

おめでたい時に登場するムーミンたち。次はどこでお目にかかれるのでしょう。6月にはヘルシンキ・バンター国際空港にムーミンショップがオープンする。来てくれるかな…あ、空港はマスク禁止か。でも着ぐるみじゃなくてムーミンはムーミンですから。

森下圭子

 

ムーミンたちはたまにヘルシンキの街なかにもひょっこり姿をあらわす。
この夏の目玉は水着。ニョロニョロが飛び出ている浮き輪なんかも登場しています。今年は大人向け浮き輪なんていうのまで