(11)ひっそりと遊ぶムーミンたち

あっという間に日が短くなって、今では朝の目覚めが思わしくない。「あ、暗い」と夏が終わったことを確かめるような気持ちが毎朝、繰り返される。そして私は毎年のようにこの時期になると「ムーミンがうらやましい」と連呼している。眠くて眠くて冬眠できるのがなんとも幸せそうなのだ。
気分も沈みがちな今日この頃だけれど、産休のムーミンショップ店長さんがムーミン会をしてくれた。生まれて間もない赤ちゃんを囲んで、新旧のムーミンショップのスタッフたちが揃ったムーミンな宴。そして何故か私にまわってくるヘムレンさんのお皿。どうしてもヘムレンさんから逃れられない運命は相変わらずだ。

会は日本のムーミングッズで大賑わいになった。彼女の家には日本のムーミングッズがいたるところに飾られている。そして当然のように私たちは日本のムーミンマグではコーヒーを飲ませてもらえず(鑑賞用ということだな)、アラビアのマグカップでコーヒーを飲んでは、宝探しのように、あちこちに潜んでいるムーミンを探していた。暗闇でぼんやり光るニョロニョロなんていうのがトイレに潜んでいた。日本ってすごい。

潜みムーミンで思い出したことがある。知人の劇作家が仕事場として使っていたアパートでの出来事だ。ある日用事があって屋根裏の物置へいったら、びっくり。梯子にはそこを滑り降りてくるムーミンがいて、窓枠には窓から入り込もうとしているムーミンがいる。あちこち見回すと、薄暗い物置に小さなムーミンが遊びまわっているではないか。こんなイタズラ、本人しかいないでしょう。そして本人でしたとも、やっぱり。そのアパートにはトーベが暮らしていたのだ。夏小屋の離れにあった厠で誕生したムーミンらしい活動ではないか。

そういえば、フィンランドの学校を見学にいくと、必ずどこかにムーミンがいる。ある時は児童が描いたものが図書館の片隅に、あるときは先生が子供の副教材にムーミンを描いていたり。どれも「えっ」と思うようなところに潜んでいる。ムーミンは潜むからこそ味わいがあるのかもね。


森下圭子

 

小高い丘にひっそりたっていた不思議の館。壁には子供のお絵かきがびっちりと並んでいる。案の定いた。一番下、右端と左端に注目。見事な潜み具合だ。
フィンランドのデザインブランド、ショールームから2008年の手帳が登場。蛇腹で見渡せる年間スケジュール、月間スケジュールがあって、一週間ごとのページが続いている。旅好き冒険好きのフィンランド人を反映してか、後ろには世界のどこででも活用できるような各国の祝日、そして単位・サイズの早見表もついててなかなか便利。