(38)海を学ぼう、自然を守ろう

いよいよムーミン65周年。60のときは淡々と過ぎ去っていった感の強いフィンランドだけれど、今回はなんだか熱い。そしてとってもフィンランドらしいなというお祝いのしかたをする。

テーマは「海の学校」。WWFといっしょにバルト海を大切にしよう、環境にやさしい暮らしをしようということを一年を通して啓発するのだ。これは65周年の公式サイトだけでなく、シリアラインやナーンタリスパホテル、出版社をはじめムーミンに関わる各企業も参加してくれるようだ。サイトではバルト海で見られる海の生き物や植物たちのこと、私たちが心がけるべき環境にやさしい暮らしのヒントなどが子供たちにもわかりやすく紹介されている。

フィンランドというと美しい自然のイメージがあるけれど、実はかつての日本がそうだったように、排水による水質汚染の問題があったりしたのだ。それも相当深刻な。努力の甲斐あって今ではそのまま飲める湖の水もある。だけど相変わらず湖をそして特にバルト海を襲う頭痛の種が「青潮」だ。海は国境で区切れるものでもないしねノなんてフィンランドの人たちはいう。現在も「何とかしなければ!」ととりたてて声を大にして言われるのがバルト海だ。そしてこのバルト海こそ、トーベ・ヤンソンが人生を通してずっと一緒だった、生活に欠かせないものだった。

はじめてクルーヴハルのあるペッリンゲの群島地域にいった夏。水不足が心配されるほど晴天が続く夏だった。おまけに暑い。当然のように海には青潮がひろがっていた。トーベの建てた小屋に暮らす末弟ラルスの島、ブレッドシャールに寄せてもらったのだけれど、ラルスが「泳いじゃだめだ、絶対だめだよ。青潮がひどい。これは毒だから」と寂しそうに、でもきつく孫たちに言っていた姿が強く印象に残っている。

ボートを漕いで何日もかけ一人で群島めぐりをした少女時代のトーベ、おばあちゃんになっても嬉しそうにやわらかな藻のついた岩を滑り台にして海に突っ込んでは悠々と泳ぐトーベ。そんなトーベの大切な海を65周年の記念に、たくさんの子供たちと考えるノそんな1年がフィンランドで始まろうとしている。

森下圭子

 

この大雪は60年代以来ともいわれるほど。ヤンソン家のお墓はなんとなく『ムーミン谷の冬』を思わせる雪景色になっています。

ムーミントレイはムーミンショップに立ち寄るたびに種類が増えているような。マグみたいに集めてる人も多いかも。一番右のクリスマス柄は1960年にトーベ・ヤンソンがデパートの包装紙としてデザインしたものです。