(57)群島をめぐる

トーベは子供の頃に手漕ぎボートで群島めぐりをしている。それが頭の片隅にあったからか、海沿いの町に滞在中、ふと思いたって少し先の小さな島へピクニックに行くことにした。手漕ぎボートで繰り出したら、これが大変。池や湖とは全然勝手が違うのだ。ほんの少しの風でも小さな波でも、ボートがどんどん持っていかれてしまう。必死に漕いでも前に進むどころかぐるぐる回るばかりだったり。1時間も漕いでないくらいで、手のひらに豆はできるし親指の付け根の皮までベロリとむけてしまった。トーベが暮らした沖の島。あんなところでボートを手で漕いだりなんかしたら…想像しようと思っても、オールを置いて海に飛び込み、ボートを両手で押しながら必死に泳ぐ自分の姿しか思い浮かばない。はなっから諦めてしまっているというか。改めて思う。10代のトーベが手漕ぎボートで島から島を巡ったということ、10代の子がこんなことをやってしまう。なんて痛快で素敵なことだろう。

群島めぐりと言えば、群島をめぐる人間模様もおもしろい。夏至祭のときにムーミンツアーで訪れたソーダーシャールの灯台。参加された方の感想をムーミンママと呼ばれていたオーナーの奥さんに伝えたところ、彼女は大喜びだった。若い頃に成績なんかでつきつけられた自分の足りなさ、そんなトラウマを吹き飛ばしてくれるくらいに嬉しいと喜んでくれた。そして彼女はそのことをフェイスブックに書き込んだ。彼女の書き込みにはこれまでにない数の喜びの声が寄せられた。ムーミンが大好きな日本の人たちの喜び、日本の人たちの嬉しさに励まされている人、それを良かったねと喜ぶフィンランドの人々。なんだかいい。

さらに「来年はミィいる?」だとか、「まだフィリフヨンカさんの枠あいてる?」と参加する気満々で聞いてくる人たち。とても楽しそうではないか。みんなの年齢がいわゆる中年くらいなのもいい。私も立派なムーミンになれるように、手漕ぎボート…それは大変そうなので、よし、ムーミン並みの泳ぎの技術をしっかり身につけて参加できたらいいなと思う。

森下圭子

ぬいぐるみがレトロな面持ちで登場。少し顔が長くなったり、昔のムーミンぬいぐるみに近いそうです。

この夏の一番人気はこれ、琺瑯マグ。夏小屋での暮らしに欠かせないのだ(歯磨き用に使う人が多い)。秋はリュックにつけてきのこ狩りの休憩のときに愛用…かな。