(98)読書の秋、ムーミンとの出会い

antikvariaatti
とある編集者が持ち込んだということで、突然のトーベ・ヤンソン祭となった古本屋さん。

 

フィンランドでは数年前の本すら本屋の棚に残っていることはほとんどなく、たいていは古本屋で探すしかない。そんな背景もあってか、フィンランドでは図書館と同様に古本屋を活用する人が多い。そんな古本屋でなかなか見つからないのがムーミン。

旅先でも古本屋を見つけると、つい足が向いてしまうのだけど、確かにムーミンやトーベ・ヤンソンの本は見つからない。家族で代々受け継がれる大切な本になっているのだろう。ムーミンファンとして、それはそれでとても嬉しいことだ。いつからか、私は古本屋でムーミンやトーベ・ヤンソンの本を探すようなことはしなくなった。

ところが先日、古本屋のウインドウにトーベ・ヤンソンの本がずらりと並ぶのを見つけてしまった。ただし、どれも二の足を踏む値段で、しかもとある出版社の編集者が売りに来たものと聞いて、なんとなく気持ちが冷めてしまった。ムーミン本、どんなにボロボロで挿絵が塗り絵になっていても、どこかの村の小学校で読まれていたものが廃校とともに古本屋に流れてきたとかだったら、私は値段も見ずに買ったかもしれない。

ところがその翌日、こんどは別の本屋でトーベ・ヤンソンの本を見つけたのだ。それは引越しで本を処分せざるを得なくなった家族のもので、妹に贈った兄のメッセージなどまでついていた。そういえばムーミンが誕生して今年が70年。出版の記念年に、トーベ・ヤンソンとその本を手にした人たちの思い出も残るいい本に出会えるなんて。

本といえば、アラビアのムーミンマグのデザイナーであるトーベ・スロッテに初めてあったのは、本の企画がきっかけだった。もう5年くらい前のことだ。何気なく使っているムーミンマグ。マグの絵柄というのは、ふだんは片面しか見ていないけれど、マグの絵を開いて一枚の絵のようにしてみたら、新しい物語が浮かび上がってくると思いませんか?というところから始まった企画だった。

ムーミンマグは、見る面によって絵柄が変わるし、ぐるりと回して眺めてみると、また別のストーリーが浮かび上がってくる。アラビアのムーミンマグは、トーベ・ヤンソンの挿絵をそのまま使うのでなく、トーベ・ヤンソンの挿絵とムーミンの世界観を、見事にマグならではの絵物語の世界にリデザインする。数多いムーミングッズの中でも珍しい作り方をしているのだ。

そのアラビアのムーミンマグが日本で一挙に展示されることになりました。まずは東京から。さらに展示を記念して、デザイナーのトーベ・スロッテが初来日します。来日イベントも予定されています(9月17日~19日)。私も通訳で同行です。子供の頃からムーミンの本を愛読しているトーベ・スロッテ。その彼女が手がけるムーミンマグの世界をぜひご覧いただけたらと思います。

9月17日、18日のイベント詳細(一部有料)
http://www.toei.co.jp/event/family/MoominStory2015.html
9月19日のイベント詳細
https://www.iittalashop.jp/news_detail.php?news_code=128

森下圭子

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別の古本屋で見つけたのは『ムーミンパパ海へいく』の初版本と、戦時中に出版されたトーベ・ヤンソンが表紙画を手がけた本。