ムーミン谷の春

2月4日は立春。まだまだ寒い日々が続きますが、暦の上ではもう春ですね。
ムーミン谷の冬は、それはそれは厳しいものです。ムーミンやしきは真っ白な雪で覆われ、海も凍結。ムーミンたちは秋から春までぐっすりと眠って、長い冬をやり過ごすほかありません。

小説『たのしいムーミン一家』(講談社刊/山室静訳)の冒頭では、初雪が降り、ムーミンたちが冬眠に入る様子が描かれます。そして、第1章、春が来てムーミントロールが目を覚まし、楽しい一年の始まり始まり!

「きょうはいいお天気になるらしいから、なにかおもしろいことをしなくちゃね」

ムーミントロールとスナフキンは口ぶえを吹いて、まだ眠っていたスニフを起こしました。長い冬の眠りから覚めたものたちと挨拶をかわしながら、ムーミンたちは山のほうへと向かいます。

「あの山のてっぺんにのぼって、ぼくらがさいしょにのぼったしるしに、石をつみあげたらどうだろ」と、スナフキンが提案。三人はどんどんと山道をのぼっていきました。

山のてっぺんから見下ろすと、青々とした春の風景が広がっていました。西に海、くねくねした川をはさんで東におさびし山、北のほうには森、南にムーミンやしきが見えます。スニフがまっ黒いシルクハットを見つけて、「もうだれか、さきにきたらしいぞ!」と叫びました。

それは、魔法の力を秘めた飛行おにのぼうしでした。そのぼうしを持ち帰ったことから、ムーミン谷に次々とふしぎなできごとが……。

長く暗い冬を越えたからこそ、心踊る新たな春。そんなムーミンたちのわくわくした気持ちが伝わる小説『たのしいムーミン一家』は、この季節にぴったりの一冊です。基本的なムーミンのお話の舞台となる場所や主要なキャラクターが登場するので、ムーミン小説の入門編としてもおすすめですよ。

そして、この春、待ち遠しい話題といえば、3月16日に迫ったムーミンバレーパーク開園!という方も多いはず。バレーパークの「おさびし山エリア」には、この『たのしいムーミン一家』に出てくる飛行おににちなんだ「飛行おにのジップラインアドベンチャー」 というアトラクションがあります。山の上から湖の真上を滑空、飛行おにになりきって空を飛んでいる気分が味わえるんだとか。

飛行おにが何を探して飛びまわっているのか、おさびし山とはどんな場所なのか、魔法のぼうしがムーミン谷にどんな事件をもたらすのか。背景を知れば、バレーパークがもっと楽しめること間違いなし! 本格的な春の訪れとバレーパークのオープンを待ちながら、ページをめくってみてはいかがでしょうか。

萩原まみ