八月の大パーティー
8月9日はムーミンの日! 2005年から、ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンの誕生日をムーミンの日として、毎年お祝いをしています(詳しくは「ムーミンの日って?」をどうぞ)。これまで都内のニッショーホールやムーミンカフェのあるラクーアなど、さまざまな場所でイベントが開催されてきました。今年は会場をムーミンバレーパークに移し、かつてない規模でのムーミンの日イベントが予定されています。ムーミン公式ファンクラブ会員さま限定のご招待はすでに締め切っていますが、一般入場も可能ですので、ぜひみんなでお祝いしたいですね!さて、今回はムーミンの日にちなんで、ムーミンのお話に登場するパーティーの場面をご紹介しましょう。その前に、皆さんはトーベ・ヤンソンにどんなイメージを持っていますか? みんなが大好きなムーミンたちを世に送り出した優しいおばあちゃん? それとも、ちょっと気難しい芸術家? もちろん、ひとことでは言い表せないいろんな側面があったと思いますが、親しい人たちとパーティーを開いて、お酒を飲んだり、音楽をかけて踊ったりするのが大好きだったと言われています。ドキュメンタリー映像を編集した『ハル、孤独の島』でも、トーベがダンスをする様子を見ることができますよ。
作者がそんなふうですから、ムーミンのお話にもパーティーの場面がたびたび出てきます。小説『ムーミン谷の彗星』では迫り来る彗星に怯えながらムーミン谷に帰る途中だというのに、寄り道して、広場でダンスを楽しんだり、『ムーミンパパの思い出』では王さまの100歳を祝う盛大な園遊会が開かれたり。絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』(講談社刊/渡部翠訳)には「いつものようにパーティーになりました」というフレーズが登場しますが、考えてみると、パーティーの場面が出てこないムーミン作品を探すほうが難しいぐらいかもしれません。
なかでも、『たのしいムーミン一家』(講談社刊/山室静訳/畑中麻紀翻訳編集)で描かれる八月の大パーティーはとても印象的。この挿絵をグッズなどで目にしたことがある方も多いことでしょう。日本のムーミンショップで買い物すると入れてもらえる紙袋にも使われていますね。以前、ブログ「海からの贈り物」でお伝えした、木の女王さまの伏線が回収される場面でもあります。ムーミンママの大切なハンドバッグがなくなってしまい、ムーミン谷は大騒ぎ。トフスランとビフスランによって無事に発見されたことを祝って、八月の大パーティーが開かれることになりました。ムーミン谷の住人だけでなく、近くの森や海辺に住むものたちも、食べものや飲みものを持って、ムーミンたちが準備したテーブルに集まってきました。ムーミンパパは樽に赤いパンチ酒を作り、ムーミンママはパンケーキのたねをなんとバスタブいっぱいに用意。ヘムレンさんの仕掛けたロケット花火が飛びかい、みんなはおおいに楽しみました。
主賓のトフスランとビフスランは、みんなに感謝の気持ちを伝えようと、旅行かばんに大切に隠していたルビーの王さまを披露。その赤い目のようにきらめく光を、遠い月にいた飛行おには見逃しませんでした。なにしろ彼は何百年も前から、世界でいちばん大きいルビーの王さまを探し続けていたのです。急いで黒ヒョウにまたがり、ムーミン谷めがけて飛んできました。
白ねずみの姿に変身して、ルビーに近づいた飛行おに。トフスランとビフスランが旅行かばんをひっぱっていこうとすると、ぐんぐん大きくなって、元の姿に戻りました。ムーミン谷の人々は警戒し、トフスランとビフスランは大切なルビーを守ろうとします。
落胆した飛行おには、ムーミンママが差し出したパンケーキとジャムをむしゃむしゃと食べました。それでみんなは飛行おにのことが怖くなくなり、気をよくした飛行おにはみんなの願いをかなえてあげることにしました。スナフキンが旅に出てしまってしょんぼりしていたムーミントロールが願ったのは、ご馳走の乗ったテーブルをスナフキンの元へ届けることでした。
スノークのおじょうさんのお願いは「木の女王さまみたいな目にしてほしい」。でも、大きくてぱっちりした目は、おじょうさんにはまったく似合っていませんでした。おじょうさんはショックで泣きだしてしまいますが、願い事はひとりひとつだけ。さて、おじょうさんはどうなってしまうのか、そして飛行おにはルビーを手に入れることができるのでしょうか……。
ムーミンの日は飯能のムーミンバレーパークだけでなく、各地でさまざまなイベントが予定されています。当日だけでなく、すでに始まっているキャンペーンもたくさん! どこにもなかなか参加できないという方は、本のページをめくって、スノークのおじょうさんの目がどうなったか、確かめてみてください。そして、ムーミン谷の大パーティーの一員になったつもりで、乾杯をしてみてくださいね。
萩原まみ