ムーミンの日って?

どうして8月9日なの?

さて、どうして8月9日がムーミンの日になったのか、説明させて下さい。

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2004年のとある日ムーミンの関係者が集まり、来年はムーミンの最初の本「小さなトロールと大きな洪水」が発表されて60周年、今まで○○周年というイベントごととは無縁だったムーミンだけど、何かみんなでお祝いをしようということになりました。さらに「ムーミンの日」を決めて、その日にイベントをやりましょうと。しかし、決まったはいいのですが、その「ムーミンの日」を決めるのに関係者全員で悩むことになります。

ムーミンの日なのですからムーミンの誕生日が一番ふさわしい。しかし、トーベさんの書いた原作の中にはムーミンの誕生日のことは出てきません。それどころか登場人物の誕生日はまったく書かれておらず「ムーミンパパの思い出」の中に生まれたときのお話が出てくるちびのミイですら、それが夏至のころとしか分かりません。だからムーミンの誕生日というアイデアはすぐになくなりました。

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最初の本が発表されてから60周年なのだからその本の出版日がいいのでは?という至極当然の意見もありました。そこで、フィンランドの関係者に手当たり次第に問い合わせて、1945年の年末ということまでは分かりました。数時間しか日の差さないフィンランドの冬にひっそりと生まれたなんて、なんともムーミンらしいと思ったものの、年末というだけで正確な日付が分からなくてはムーミンの日にすることができません。これもダメです。 ムーミンたちも盛大にお祝いする夏至の日がいいんじゃないかと、お祝い本位の意見もありました。1年で一番昼の長い日なんてこれまたムーミンらしくていいと思ったのですが、残念ながら夏至の日は毎年同じではありません。毎年違う「ムーミンの日」ではちょっと都合がよくありません。 そういえば、ムーミンのファンは以前から6月3日をムーミンの日と言っているし、その日にしてはどうだろうという意見もありました。しかし、日本語の語呂合わせではフィンランドの方々にいっしょにお祝いをしましょうと提案することもできません。いつかは世界中のムーミンファンがいっしょにお祝いする日にしたいですからね。(もちろん日本のファンの方々が6月3日にお祝いしちゃいけないってことじゃありません。) 何度も打ち合わせを重ねた結果、決まったのがムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンさんの誕生日8月9日。これには全員納得。フィンランドの著作権者も賛同してくれました。かくして2005年の8月9日、出版から60周年の初めての「ムーミンの日」に向けて関係者一同で準備を始めたのでした。

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さて、初めてのムーミンの日、2005年8月9日。どんな催しをすればファンの人たちに喜んでもらえるのか?また関係者の悩みが始まります。ムーミンと言えば岸田今日子さん。是非、新しく出版される絵本を朗読してもらいましょう。トーベさんが1990年に来日したときの映像やインタビューを納めたフィンランドのテレビ番組があるからそれを上映するのは?日本語版はないので、翻訳者の冨原眞弓さんに解説をお願いできるといいんだけど。「少女ソフィアの夏」にも登場する、トーベさんの姪のソフィア・ヤンソンさんに挨拶をしてもらうのはどうだろう?せっかく来てくれたファンの方々にプレゼントするものを用意しなくては!と初めてのイベントで戸惑いながらも、2005年8月9日「ムーミン誕生60周年の集い」と銘打った催しは新宿紀伊國屋ホールで300人のファンの方々を集めて大成功に終わったのでした。

めでたしめでたし。

2年目の2006年。世は北欧ブーム。そのおかげでムーミンもいろいろなところで北欧フィンランドのキャラクターとして紹介されることが多くなってきました。「北欧ブーム」なんて簡単に書いてしまいましたが、すでにこの頃にはブームというより、ひとつのスタイルとして定着していました。でも、まだ北欧のデザインがポピュラーではなかったころ、それを教えてくれたのが、渡部千春さんが書いた「北欧デザイン」シリーズの3冊。布張りのそれこそ北欧風の洒落た装丁の本。(今でも売ってますので、興味がある方は是非。出版元はムーミンとも縁の深いプチグラパブリッシングです。)私もこれを読んでいろいろと勉強しました。今でこそ、アラビアのムーミンマグはカイ・フランクのデザインしたTEEMAシリーズのマグにペイントしたものなんて、デザイナーの名前がすらすら出てきますが、当時はフィンランドのデザイナーの名前なんてひとりも知らなかったのですから。 2006年のムーミンの日のイベントでは、その渡部千春さんを招いて対談が行われました。その対談のお相手は渡部翠さん。渡部翠さんは元ヘルシンキ大学講師。ムーミンの絵本や「ムーミンママのお料理の本」を始めたくさんのフィンランドの本を翻訳しています。ご主人でフィンランド文学研究家の高橋静男さんを講師としたムーミンゼミから生まれた「ムーミン童話の百科事典」はムーミンファンのバイブルのような存在です。もちろん渡部翠さんはこの本でも共著者として名前を連ねています。

このお二人、渡部千春さんと渡部翠さんのダブル渡部さん(渡部千春さんは「わたべ」、渡部翠さんは「わたなべ」ですが。)の対談が行われたのは、講談社講堂。ムーミンと関係ありませんが、「講談社講堂」をインターネットで検索すると、ここが「あしたのジョー」の力石徹の葬儀が行われた歴史的な場所ということが分かります。それなに?と思う方も多いと思いますが、とにかく歴史的なんです。

さて、打ち合わせもなく始まったお二人の対談。どんな方向に進むのか分からないスリリングな内容でしたが、フィンランドデザインから、トーベ・ヤンソンそしてムーミンと話題は広がって、興味深いものとなりました。 でも、お話がさらに盛り上がったのは、この日の慰労会の会場。皆さんに公開できないのがとっても残念でした。

そんな風に船出したムーミンの日、その後もオーロラカフェや有明のパナソニックセンター、後楽園ラクーアのガーデンステージなどを会場に、毎年ムーミンに関わった方々を交えてファンの皆さまと楽しい会を開いてきました。「楽しいムーミン一家」の主題歌とナレーションを担当なさった歌手の白鳥英美子さんや、ムーミン・コミックスを始めとするたくさんのムーミン本の翻訳や著作がある冨原眞弓教授、ムーミンとミイを担当した声優さんである高山みなみさんと佐久間レイさんなどの出演者については、ご存知の方も多いでしょう。他にも大勢の方が関わっていますし、誰もが、一人でも多くのムーミンファンに喜んでもらいたい、この機会にもっとムーミンについて知ってほしいと願って、関わってくださっています。そんな「ムーミンの日」を盛り上げるために、これからも関係者 一同がんばりますので、ぜひ、皆さまもご一緒に楽しんでいただければ幸いです。