(39)壁にさりげなく新聞の切り抜き
アニメの登場でムーミン人気は不動になったけれど、それまではフィンランドでのムーミン人気に波があった。干支ひとまわり程で次の波という按配。先日、70年代伝説の若きミュージシャンについてのドキュメンタリー映画を観にいったら、幾度となく登場したムーミン話に、見事なくらい観客が無反応だった。映画の最後に流れたこの天才の歌の、歌詞にまでムーミンが登場したのに無反応。フィンランドにいるからって、いつもムーミンで盛り上がれるわけでもないのだ。でも寂しかったなあ。子供番組という印象が強すぎるのかも。いつか巡りめぐって、またムーミンに再会してくれたらな、とひそかに映画館で願ってしまった。
映画そのものは拍手喝采で、観客の大部分を占めていたアート系の学生たちは、多いに影響されているようだった。翌日バンド結成してもおかしくないほどに。それくらいの影響力のある人が大切に壁に飾っていたのが「あざらしの絵」。それが特に印象的で、とかつての親友が証言していたのだ。バンドよりも、このあざらし探しする人がいっぱいいそうだ。
実はこれ、トーベ・ヤンソンのアトリエにも夏小屋にも飾られていた。たぶん新聞の切り抜き。この「あざらしの絵」というのはフィンランド自然保護協会のロゴで、あざらしがプカプカと気持ちよさそうに海で垂直に浮かんでいる。トーベの、手作品や芸術作品が並ぶアトリエにも、シンプルな夏小屋にもこの「あざらしの絵」はちょっと異質で、そして妙に印象に残るものだった。ユニセフやアムネスティーでトーベが手がけた挿絵のカードやTシャツなどがあるけれど、フィンランド自然保護協会向けにトーベがなにかデザインしたことはないようだ。残念ながら同じような新聞の切抜きを探すことは難しいけれど、実はそのロゴの入ったものはたくさんある。文房具もあるしTシャツやタオルもあるし、日用雑貨もある。ムーミンショップのフォーラム店から地下で繋がっているカンッピのショッピングモールのネイチャーショップ。もしフィンランドにいらっしゃることがあれば、どんなあざらしか見てみてください。
2月に入り少しずつムーミン65周年の催しが特別サイト以外のところでも始まりつつあります。特別なカードや陶器などのグッズもこれから少しずつ発表されそうです。
森下圭子
こちらが本文でご紹介した「あざらしの絵」。
ムーミンの紙おむつは以前から人気商品でしたが、ついにオーガニックも登場。スーパーでも大々的に宣伝されています。