(49)ムーミンのいないムーミン
今年のクリスマスは突出した人気の商品がない。それくらいに商品は多様化してきているし、対象を広げてきているのだ。かつては人気商品が集中し、「あの商品はどこでまだ手に入るか?」と全国規模で探したりした。例えばアラビアからクリスマス前に登場した最初のシーズンマグや、子供向けのムーミンコンピュータ。お客さんがわざわざ「○○にはあと1台あるわよ」なんて教えに来てくださったり、ムーミンショップの店員も、あちこちの店に電話して在庫状況を確認し、探している方にお伝えすることもあった。
クッキー型ひとつとっても、シルエットだけのものや絵柄つき、ツリーの飾りにできそうな大判、そして小さなタイプとまちまちだ。サイズの大小、グッズの内容、対象を広げてもどんなに商品の種類が増えても、ムーミンはムーミン。そこでいきいきしている。改めてトーベ・ヤンソンの力と、ムーミンのキャラクターとしての強さを再確認するのだった。
そしてさらに進化系が登場した。ムーミン童話のシリーズの中にはムーミン一家がでてこない作品がある。そして商品にも、ついにムーミンがでてこないムーミングッズが登場した。今のところはノートだけ。でもぱっとみて分かるトーベとムーミンの世界。今後はこういうアイデアが他の商品でも登場してきそうな気がしている。
フィンランドの最高デザイン賞ともいわれるカイ・フランク賞が設けられたとき、その話をきいたデザイナーのヴオッコ・エスコリン=ヌルメスニエミ(マリメッコの初期を牽引したひとり)の頭にぱっと浮かんだ人はトーベ・ヤンソンだったと伺ったことがある。作品だけじゃなく、彼女の存在そのものが素晴らしいデザイナーだと思うから、と言葉が続いた。
グッズだけでなく、グッズを使ってのびのびと遊ばせてくれる、これもまた彼女の素晴らしい芸術家・デザイナーの力量なんだと思う。友人の家で絵心のない大人たちと想像力豊かな子供たちで作ったジンジャークッキー。ムーミンの形があるので、とんでもない模様を施しても失敗感がない。とことん遊べる楽しさ(しかも美味しい)。ムーミンありがとう、トーベ・ヤンソンありがとう。このまま楽しいクリスマスとなりますように。
森下圭子
オプト社のつるつるランチョンマットが大活躍。クッキー生地をのばす時の下敷きとして使用。クッキー生地がくっつきにくいし、洗うのも簡単です。
ムーミン一家のいないムーミングッズが登場。プティンキ社のノート。