(83)箱の中のトランプとキャンディ
ムーミンショップに登場したトーベ・ヤンソン生誕100年の記念ロゴ入り商品第一号はこちら、ユニセフのクリスマスカード柄キッチンタオル。
もう7、8年前になるか。トーベ・ヤンソンの夏の島として知られるクルーヴハルの小屋に泊まった。雑誌の取材だったので、どこに何があるのか、細かく細かく確認した。当時でトーベたちが島を最後にした1992年からは20年以上になる。海に関する大好きな本など、本当に大切なもの以外はすべて残していった二人を尊重して、なるたけそこは当時のままにしていたけれど、宿泊した当時、大雨が降るとひどい雨漏りもしたし、そろそろきちんと修復しなくてはという状況にたたされていた。今では屋根も張替えられ雨漏り知らずになり、窓を覆う木の扉も新しくしたり、今年はついにベッドカバーまで新調されていた。7、8年前というのは、トーベたちがいたときの調度品がまだだいぶあった最後の最後くらいの時期にあたるのかもしれない。
さて細かく細かくチェックしながら気づいたのは、ここをこんなに細かく調べている人はそれまで一人もいなかったのかもしれないということだった。一番上の棚にひっそり置かれた小さな箱。それもまた忘れられたまま20年と思わせるものだった。きちんと元に戻せるように箱の場所と向きを確認し、静かに箱を下ろした。テーブルの上で蓋をあけてみると、そこにはトランプと古びたキャンディーがいくつか一緒に入っていた。それはいかにも「トランプで勝ったら一個!」といった風情で、「トーベたちが置いてったキャンディーだ」と直感的に思ってしまった。キャンディーは、フィンランドのホテルに宿泊したことがあれば手にしたことがあるかもしれない。赤と白のストライプの包みが目印のチョコ入りミントキャンディー、ファッツェル社のマリアンネだった。
それからは、なんとなく意識的に日本へのお土産に買うことが増えた。何の確証もなかったけれど、トーベたちはお客さんにいつもキャンディーやたくさんのお菓子でもてなしていたというのを思い出したりし、いつか確証がとれたらなと考えていた。
つい先日、トーベの姪ソフィア・ヤンソンがトーベの好きなものの話をしていて、濃いブラックコーヒーなんかといっしょに「マリアンネ」と言った。やった!だからといって、あのとき箱にあったものがトーベの置いていったものとは相変わらず明言できないのだけれど。感無量、浮かれてます。
マリアンネのHPはこちら。(CMもご覧いただけます。マリアンネ、なぜかマリリン、合言葉はププッピドゥ)
年間140万キロも出荷されているそうです。
森下圭子
ヘルシンキのムーミンショップには時々オリジナルグッズが登場する。ニョロニョロリュックは大人が自分用にと購入されることも多いとか。