(181)芸術の秋、舞台の秋【フィンランドムーミン便り】

この秋上演されるムーミン人形劇、人形制作のようす


8月になりフィンランドは新学期を迎える。のんびりした夏休みの空気とは違う街のリズムがヘルシンキに戻る。秋だ。

長い夏休みを終えた市立劇場が、カーニバルと銘打って久しぶりにイベントを開催した。この秋に上演される舞台の紹介や、ふだん裏方でやっている人たちの仕事の実演もあり、平日の昼というのに大勢の人で賑わっていた。

私の目当てはムーミン人形劇。実は2月の上演予定が、コロナ禍で延期になっていたのだ。劇場を入ってすぐのところは、舞台美術や衣裳の紹介ブースになっている。衣裳部のスライドを見ていると、ムーミンの人形が現れた。そうか、衣裳を作る人たちが人形劇の人形も作っているのか。

ブースにはムーミン人形劇を担当したリーッカさんがいて、もともとマーメイドの尾ひれや、体を動かしやすい特殊な衣裳を作ることが大好きだと言う彼女は、ムーミン人形劇の仕事を楽しそうに話してくれた。けれど、彼女が私に伝えたいのは苦労話とかそんなことでなく、「舞台はスウェーデン語だけれど、フィンランド語と英語の字幕もつくし、っていうか、音楽と歌だけでも楽しいので絶対観てみて!」ということだった。

ヤコブ・ホグルンド監督は人形劇が専門ではない。でも、ムーミンをやるなら人形劇だと考えていたのだそうだ。

「ムーミンをイメージしたときに、登場人物全員が人間と同じサイズだと違和感があったんです」と彼は答えてくれた。彼の頭の中に動き回るムーミンたちは、リトルミイがうんと小さくて、ムーミントロールは自分の腿あたりの丈。でもフィリフヨンカはすごく大きい。そういう大きさの自在さを人形劇で表現したかったのだそうだ。

リーッカもヤコブも「それから!」と口を揃えて言っていたことがある。それは今回の人形劇が白黒の世界だということ。スニフも、リトルミイもスナフキンも、みんな白黒の世界。コミックスが原作だから白黒なのだ。そして登場する人形の数は100近くあるのではという。その100はほとんどがニョロニョロだったりするのか、それとも草花なんかも入っているのか、なにをどうしたら100になるのだろう。それを想像するだけでも楽しい。
(来月につづく)


ムーミン人形劇のサイト(紹介動画では練習風景も少し登場します)
https://lillateatern.fi/repertoar/kris-och-katastrof-i-mumindalen/

フィリフヨンカは二人がかりで操る大きさ

森下圭子