白鳥澄夫——平成アニメ『楽しいムーミン一家』の作曲者【本国サイトのブログから】
あなたは90年代に大人気を博したアニメーション『楽しいムーミン一家』を見たことがありますか? もし、あるなら、作品のなかで流れていた素晴らしい音楽の数々が耳に残っていることでしょう。日本人作曲家の白鳥澄夫さんが、なんと260曲(!)に及ぶサウンドトラックと日本版主題歌の作曲を手がけました。
『楽しいムーミン一家』は、日本では1990年からテレビ東京系で放送が始まり、フィンランドからアルゼンチン、ネパールに至るまで、世界中で視聴されてきました。このテレビシリーズは日本とフィンランド、オランダのコラボレーションによって生まれたもので、原作者のトーベ・ヤンソンと弟ラルス監修のもと、日本で製作されました。劇中で使われた音楽は、番組を見て育ったたくさんのファンに強い印象を残しています。とりわけ、モランのテーマ曲や冬が訪れたときの音楽を今でも覚えているというフィンランド人は少なくありません。
ムーミンのために約260曲を作り上げた白鳥澄夫さんはプログレッシブロック、日本のリズムや笛の音色からインスピレーションを得たといいます。また、公私ともに澄夫さんのパートナーである歌手の白鳥英美子さんは日本版のナレーションのほか、主題歌や氷姫のテーマの神秘的な歌唱も担当しました。
「わたしにとってすべてがムーミン中心になった」
2025年11月、『楽しいムーミン一家』のサウンドトラックをオーケストラ用にアレンジして演奏するという史上初のコンサート「Sumio Shiratori MUUMIMUSIIKKIA tv-sarjasta Muumilaakson tarinoita」(以下、ムーミンミュージックコンサート)が開催され、白鳥澄夫さんと英美子さんはフィンランドを訪問。その際、ムーミン公式YouTubeチャンネルのインタビューに応じ、ムーミン音楽の作曲に関する背景を明かしました。
この動画で、白鳥夫妻や関係者のインタビュー、コンサートの一部とその舞台裏を知ることができます。
澄夫さんは驚くべきことに、90年代のアニメーション『楽しいムーミン一家』のプロジェクトが始まる前、ムーミンについてほとんど知りませんでした。
「30年前、何がどうなるか、ぜんぜんわかっていませんでした。ムーミンのこともよく知らないし、ただ、こういう物語だということだけ知らされて、それで作るしかなかったんです。とにかく美しいメロディ―で、みんなにわかってもらえるような音楽を心がけました。最後には、ムーミンが自分のすべてのようになって、出し尽くしてメロディーを考えて、これで終わっても構わないや、っていうような気持ちが沸きましたね」
ムーミンのサウンドトラックの仕事は、白鳥一家の人生全体に大きな影響を与えました。英美子さんは日本版オープニングとエンディングテーマ、氷姫のテーマなどの何曲かを歌い、娘のマイカさんは『楽しいムーミン一家』を見て楽しい時を過ごしました。
「こんなことが起こるなんて、胸がいっぱいです」
そして、ヘルシンキで行われた初めてのムーミンミュージックコンサートは、白鳥一家にとってもまたいまだかつてない体験となりました。自身もシンガーソングライターとして活躍している娘の白鳥マイカさんたちと共に、家族でフィンランドを訪れたのです。世界中から会場に詰めかけたムーミンファンの観客に向けて、英美子さんは日本版主題歌『夢の世界へ』を披露しました。
「(テレビシリーズが始まったとき)娘はまだ小学校に通う小さな子どもだったので、いっしょに放送を見ました。映像を見て、自分が歌った曲を聴いて、すばらしい!と思ったのを覚えています」
30年以上の時を経て、オーケストラで甦ったムーミンの音楽。そのコンサートを前に、英美子さんは「感慨無量です。こんなことが起こるとは思ってもみなかったので、彼(澄夫さん)もそうだと思うんですけど、胸がいっぱいです」と語りました。

番組製作当時、トーベとラルスは積極的に取り組みましたが、作曲家と直接連絡を取り合うことはありませんでした。澄夫さんはトーベに一度だけ会ったことがあるものの、彼女が取材を受けている間、遠くから見ていただけだったそうです。
トーベは『楽しいムーミン一家』の出来栄えにとても満足していたと伝わっており、音楽も楽しんでいたのは想像に難くありません。
『楽しいムーミン一家』の放送から約30年間、人々は澄夫さんが作った音楽を大切にしてきました。それゆえに、このコンサートが実現したのです。これから先も、10年20年と、もっともっと長く、ムーミンの物語と音楽は愛され続けることでしょう。
白鳥澄夫さんに関するドキュメンタリーを見る
ムーミンミュージックコンサートのエグゼクティブプロデューサーと芸術監督を務めたヘイッキ・ランタによる白鳥澄夫さんに関する興味深いドキュメンタリー。この動画が作られるまで、フィンランドの人々はどんな人物がムーミンのサウンドトラックを手がけたか知らず、澄夫さんは自身の音楽がどれほどフィンランドで人気なのかまったく知りませんでした。このドキュメンタリーがきっかけとなってコンサートへとつながりました。この動画の音声はフィンランド語ですが、日本語の字幕を利用することができます。
ムーミンのサウンドトラックを聴く
『楽しいムーミン一家 オリジナル・サウンドトラック ベスト』は各種ストリーミングサービスで配信中。白鳥澄夫さん自身が2025年のムーミン80周年のテーマ “The door is always open.”に合わせて、ストリーミングサービスのために32曲を厳選しました。
ファンによるユニークなムーミンミュージック
フィンランドにはムーミンファンのアーティストが何人もいます。彼らが独自にアレンジした白鳥澄夫さんの楽曲をお楽しみください。
アニメ『楽しいムーミン一家』を視聴
ムーミン公式YouTubeチャンネルでは『楽しいムーミン一家』英語バージョンのほとんどのエピソードを視聴できます。(著作権の関係上、以下のリンクが開かない国では見ることができませんが、日本からは視聴可能です)
追記。『楽しいムーミン一家』とムーミンミュージックコンサートに関する日本語の記事をいくつかご紹介しておきます。
▶森下圭子さんによるコンサートのレポート「ムーミン愛【フィンランドムーミン便り】」
▶アニメの楽曲をオーケストラ用にアレンジしたエピソード「感情の引き出し【フィンランドムーミン便り】」
▶ムーミンアニメーションの歴史「昭和から平成、令和へ。ムーミンアニメの歴史」
▶白鳥英美子さんがご登場くださったムーミンの日レポート「ムーミンの日2025【イベントレポート】【ムーミン春夏秋冬】」
翻訳/萩原まみ