トーベ・ヤンソンの夏の楽園 ドキュメンタリー動画が公開されました


 

「島を夢見て、探し求めている人は驚くほど多い」とトーベ・ヤンソンは書いています。トーベはその夢を叶えた一人です。クルーヴ・ハルは、トーベにとって楽園であり、情熱であり、尽きることのないインスピレーションの源でした。

小さな無人島

クルーヴ・ハルは、ペッリンゲの南のフィンランド湾の群島の中で、最も沖合にある小さな島です。岩だらけのこの島は、ちびのミイなら「ハエのふん」と呼ぶような小さな島ですが、トーベ・ヤンソンとトゥーリッキ・ピエティラにとっては、まるで世界そのものであるかのような夏の楽園となったのでした。

「トーベとトゥーリッキがクルーヴ・ハルに来たとき、彼女たちは50歳近くになっていて、若くはありませんでした。群島沖のこの無人島に家を建てるというアイデアに、多くの人が眉をひそめました。島には電気も水道もないのです。みんな、女性にそんなことはできないだろうと思っていましたが、二人はそれが間違っていたことを証明しました」。トーベ・ヤンソンの姪で、ムーミンキャラクターズの代表で、アートディレクターでもあるソフィア・ヤンソンは語っています。

島の小屋に部屋は一つだけ、四方に窓があります。トーベは、クルーヴ・ハルでの記録を記した『島暮らしの記録』という本を残しています。トゥーリッキの美しいグラフィックが添えられ、トーベの母で挿絵画家のシグネ・ハンマルステン・ヤンソンが表紙を描きました。

「私たちはどんな小屋になるだろうかと夢を見る。窓は4つあるだろう、それぞれの壁にひとつずつ。南東の窓は、島を横切って荒れ狂う大嵐のためのもの。東の窓では、月が溜り水にその姿を映すだろう。そして西の窓からは苔とシダに覆われた岩壁が見えるだろう。北の窓では、やって来るものを見張り、それに備える時間を持てるようにしなければならない」

 

仕事とインスピレーションを得るための場所

トーベとトゥーリッキは、4月、あるいは5月から9月までの夏の間を、30年近く島で過ごしました。しかし、彼女たちは怠けていたわけではありません。二人とも日がな一日、絵を描いたり、グラフィックを作ったりしていた勤勉なアーティストでした。

「クルーヴ・ハルはトーベとトゥーリッキの避難場所になりました。彼女たちはそこで、一人になることができたのです。好きな時に、好きなように仕事をすることができました。仕事をしているときは、お互いそっとしておくことにも長けていました。小屋は小さかったけれど、それぞれの机もありました。テントもあって、必要なときにはそこに移動できるようになっていたんです」とソフィアは言います。

トーベにとって海は、ムーミンの物語や短編小説、そして「風力階級8級」のような絵画作品の、最も大きなインスピレーションの源であり、繰り返し描かれるテーマでした。以下は、クルーヴ・ハルでの生活がムーミンの物語にどのように影響を与えたかの一例です。動画ではより詳しく紹介していますよ。

トーベとトゥーリッキがクルーヴ・ハルに小屋を建て始めたのは、1964年のことでした。二人は平穏と静けさを求めていました。それは夏の間ヤンソン一家が過ごしていた、より内陸に近い島にはないものだったのです。しかし、彼女たちは完全に自分たちだけで過ごすことはできませんでした。多くの来訪者があり、宿泊客が小屋で寝るときは、トーベとトゥーリッキはテントで寝ることを申し出たこともあったのです。

ムーミンやしきと同じように、クルーヴ・ハルの小屋も予期しない訪問客に開かれていました。今でも窓には、「窓を壊さないでください。鍵は外の壁にかけてあります」と書かれた注意書きが置かれています。

群島にいても、彼女たちは郵便物を受け取っていました。二人がペッリンゲにいるとき、トーベはよく一日中、仕事の手紙やファンからの手紙に返事を書いていました。彼女は年間平均2000通の手紙を受け取り、それらの手紙にひとつずつ、いつも手書きで返信することに誇りを持っていたのです。

待ちに待ったクルーヴ・ハルで過ごす数ヶ月間は、ヘルシンキ中心部での生活とは対照的なものでした。

「クルーヴ・ハルは、冬の間ずっと待ち焦がれる場所になりました。私は冬に、カサルミ通りで二人を訪ねたことを思い出します。彼らはすでにクルーヴ・ハルに持っていくものすべてのリストを作っていました。特にトゥーリッキはとても整理整頓がうまくて、4月の終わりまで島に行くことはできないのに、早くから荷造りを始めていました」とソフィアは言います。

もちろん、島のすべてが平和だったわけではありませんでした。初夏の間、この島は子育てをする海鳥たちに占領され、2本足の住人たちは、控えめに言っても困難な生活を強いられました。『島暮らしの記録』にも、この戦いは描かれています。

「そう、もちろん優先権は海鳥たちにある。ここは遠く幾世代も前から、彼らの正当な領土なのだ。明らかに、彼らには私たちを憎むまっとうな理由がある。彼らはくちばしから急降下し、叫び声をあげる。アジサシは最悪の、純粋な戦士で、フンの狙いときたら百発百中だ。この自由と遥かな水平線の輝く白いシンボルは私たちをひどく悩ませる。トゥーティは傘なしではスケッチができないし、朝、縄跳びをすれば、宣戦布告と受け取られてしまう(見ている分にはとても面白い)。おかげで私たちは泳ぐことも、網を下すことも、ボートまでたどり着くことすらできない。誰かからこれほどの正当性をもって憎まれるのは、人生で初めての経験だ!」

 

動画はこちらからご覧ください。

翻訳/内山さつき