「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展がパリで開幕! 【本国サイトのブログから】
9月29日、トーベ・ヤンソンの人生とキャリアを紹介する、「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展がパリで開幕しました。この展覧会は、トーベの作品をユニークで現代的な環境で展示する、フランスで開催される最大規模の展覧会です。
「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展では、70年以上にわたるトーベの画家としてのキャリアから幅広い作品が紹介されるとともに、トーベの作品からインスパイアされたカプセルコレクション*が展覧会会場限定で販売されます。
トーベは芸術を通して経済的に自立することを望んだ、野心的で妥協しない姿勢を持ったアーティストでした。彼女は自分の芸術的視点が商業的な場にも反映されるよう、1950年代にムーミンのライセンス事業を始めたのです。
*ファッションブランドがデザイナーなどとコラボレーションし、販売期間・数量を限定して行う小規模な新作コレクション。
個性的なカプセルコレクションを紹介した展覧会
「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展がパリで開催されるのに先立ち、キュレーターは、展覧会会場限定のユニークなカプセルコレクションを発表しました。このカプセルコレクションは、国際的なデザイナーや職人たちのコラボレーションによるもので、アパレル、ジュエリー、インテリアなどが多様に組み合わせられています。
ディヘラ、ヴィテッリ、アナ・クラシュ ✕ CC Tapis、サビーヌ・マルセリスとコラボレートし、トーベの人
コレクションのアイテムはそれぞれ、トーベの人生と創作の旅路のさまざまな側面からインスピレーションを得ています。デザイナーたちは、トーベの表現豊かな色づかいや、小説に描かれた青年期と熟年期との二面性、刺激的なムーミンの物語、そしてトーベが愛した島クルーヴハルのサマーコテージで感じた孤独と安らぎなどから発想を得ています。
初期のムーミン小説からインスパイアされた「ヴィテッリ」のニット
「ヴィテッリ」はマウロ・シミオナートによって2016年に設立されたブランドです。ヴィテッリは、特殊な機械を用い、再利用された糸を使った現代的で、ジェンダーレスなニットウェアのデザインを手がけています。「メイド イン イタリー」であることとイタリアの若者文化を再び結びつけることを目指しています。
ヴィテッリは、ニードルパンチで織り上げたタペストリーと、大人と子どものセーター、オーバーシャツを制作しました。これらはすべてムーミン小説の最初の3冊『小さなトロールと大きな洪水』(1945年)、『ムーミン谷の彗星』(1946年)、『たのしいムーミン一家』(1948年)からインスピレーションを受けたものです。
カプセルコレクションとデザイナーについては、展覧会ホームページをご覧ください。
ハンドメイドのペーパーフラワーがかわいい「ディヘラ」のネックレス「スノークのおじょうさん」
「ディヘラ」は、ステファニー・ディヘラよって、2018年に設立されたブランドです。自身の名を冠したジュエリーレーベルは、独創的で示唆に富む作品によって、あっという間に業界からの称賛を集めるようになりました。パリを拠点とするディヘラは、大胆でミニマルな構成で、ユニセックスなジュエリーやアクセサリーを制作しています。
ディヘラがスノークのおじょうさんにインスパイアされてデザインした限定版のネックレスは、ハンドメイドのペーパーフラワーと取り外しできるチェーンが特徴で、ペンダントは小さな機能的な花瓶に変身するのです。
この「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展のネックレスは、このブランドの代表的なデザインとして知られる、「キャニスター」シリーズに続くものです。
トーベ・ヤンソンの夏の島にインスパイアされた「アナ・クラシュ ✕ CC Tapis」のラグ
アナ・クラシュは、「CC Tapis」とコラボレーションし、トーベの夏の隠れ家だったクルーヴハルの孤独と自然にインスパイアされた、ハンドメイドのウールのラグを制作しました。
フランス生まれで、ミラノでデザインされ、チベットの熟練職人によって、ネパールで生産されている「CC Tapis」は、現代的な手織りラグを生産するイタリアの企業です。アナ・クラシュは、ベオグラードの応用芸術大学で家具デザインとインテリア建築を学んだ後、ニューヨークに移住し、デザイン、アート、写真、ファッションなどさまざまなプロジェクトを追求しています。
『少女ソフィアの夏』にインスピレーションを受けたサビーヌ・マルセリスの鏡
オランダ生まれで、ニュージーランド育ちのデザイナー、サビーヌ・マルセリスは、小説『少女ソフィアの夏』の色彩を解釈し、作品に登場する青春期と熟年期の二つの側面に着想を得て、色彩を重ねた、床まで届く特注の鏡を2つ制作しました。
マルセリスの魅惑的な家具の、流れるようなシンプルなフォルムは、一見ごく自然に作られているように見えますが、それはディテールへの妥協のないこだわりと、素材への大胆な実験から生まれたものなのです。
トーベ・ヤンソンの本棚をのぞいてみよう
読書コーナーにもなっているユニークな空間では、さまざまな体験ができます。来場者はここで、トーベの個人的な蔵書に触れたり、カプセルコレクションの商品や、トーベの著作を買えたり、トーベがヘルシンキのアトリエや島、旅行中に読んだ本などを見ることができます。トーベの本棚から厳選された文学作品は、パリ20区にある北欧の書店兼カフェ、「ボックバー」とのコラボレーションによって選書されました。
セレクトされた本は、トーベの人生で大切な役割を果たしたもので、そのうちのいくつかは、最も愛する友人や恋人、家族に宛てた手紙の中でも言及されています。「ボックバー」は北欧文学を専門とする書店で、トーベの蔵書から主に北欧の作家をキュレーションしています。フィンランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、アイスランドの作家の作品が多く選ばれています。
さまざまな形のムーミン
この展覧会は、トーベ・ヤンソンの初期における視覚的言語と、物語のスタイルの発展から始まって、絵画、ドローイング、イラストレーション、著作など、そのキャリアの中で重要な作品が一堂に会しています。
ムーミンファンは、トーベがどのようにムーミンの物語を演劇、コミック、商品などさまざまな芸術形態や商業製品に広げていったかを探ることができるでしょう。
「フィンランドで育った人にとって、トーベとムーミンは、子ども時代や教育と切っても切り離せない関係にあります。ムーミンの本をもう一度読み返す過程は本当に楽しいものでした。子ども時代やティーンエイジャーだったときとは違った読み方ができ、さまざまな要素を見つけ、探求することができるのです」と、展覧会開催機関のキュレーター、シニ・リンネ・カントとトゥッカ・ラウリラは語っています。
「トーベのような影響力のある偉大な芸術家の展覧会を企画し作り上げるのは、身の引き締まる思いです。私たちは、この展覧会が、トーベのキャリアにおいて重要な作品だと考えたものをただ展示するだけでなく、彼女の人生に対する姿勢や哲学を伝えるものであることを願っています」
会場は元印刷所
「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展は、パリ11区にある元印刷所だった場所で開催されています。さまざまなセクションに分けて、トーベの人生を紹介しています。セクションごとに、トーベの人生と芸術作品の要素が融合されています。
物理的に異なる空間は、トーベにとって重要でした。キュレーターたちはこの展覧会を企画するにあたり、想像と現実、両方の側面でさまざまな空間に注目しました。インスピレーションの源となった場所は、拡大し続けたムーミンやしき、フィンランド湾に浮かぶ孤島クルーヴハル、トーベが愛したパリの街、ヘルシンキのアトリエなどです。
「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展は、パリ ファッション ウィークの期間中の9月29日に開幕し、国際的なアートフェア「Paris+ par Art Basel」の期間を通して10月29日まで開催されます。会場は、パリ11区のモン・ルイ通り8番地にある「エスパス・モン=ルイ」。
「ハウス オブ トーベ・ヤンソン」展は入場無料ですが、事前登録が必要です。
世界各地で開催されているトーベ・ヤンソンとムーミンの展覧会についてはこちらから
翻訳/内山さつき