この子の名前は?
7月に入り、いよいよ夏本番。
8月9日のムーミンの日の準備も着々と進んでいます。イベントなどの情報は随時更新されていきますから、どうぞお見逃しなく!
さて、今回のムーミンブログは久々のムーミンクイズ形式。
本題の前にまずはひとつ、夏気分を盛り上げてくれる新シリーズ「The summer time(ザ サマータイム)」から軽いクエスチョンを。
この、ムーミンたちが身を寄せ合うアート、右から二番目、猫とムーミンパパの間にいるのは誰でしょう?
これはムーミン・コミックス「おさびし島のご先祖さま」(第11巻『魔法のカエルとおとぎの国』収録/筑摩書房刊/冨原眞弓訳、以下同)の1コマ。
……ということは、このお団子頭のキャラクターはミムラねえさんが正解です。
妹と混同されがちなのですが、1955年発表の同エピソードには、ミムラねえさんしか登場しません。
ムーミンやしきに滞在中のミムラねえさんを訪ねて、ミムラ一家がやってくる「家をたてよう」(第4巻『恋するムーミン』収録)が発表されたのは1956年。そのお話については、ブログ「子どもの日」や「きょうだいは何人?」でも詳しくご紹介しています。
さきほど、正解はミムラねえさんと書きましたが、原語である英語では「I AM THE MYMBLE」と名乗っていて、日本語版ではミムラと訳されています。
THEとついていることからもわかるように、ミムラというのは個人名ではなく、種族名なんです。
その場にミムラ族がひとりしかいなければ、ママミムラもミムラねえさんも「ミムラ」で通じます。でも、一族が一堂に会する際には「ママ」や「ねえさん」といった補足がないと混乱してしまいますよね。
小説『ムーミンパパの思い出』でミムラとだけ書かれているときは、ミムラねえさんをはじめとする大勢の子どもたちの母親であるママミムラ(旧版とコミックスでの訳名はミムラ夫人)を指しており、ミムラねえさんは「ミムラのむすめ」と呼ばれています。
なぜそんなややこしいことになるのかというと、ムーミンのお話の登場人物の多くは個人名を持っていないから。
主人公のムーミントロールですら、個人名ではなく種族名で、ムーミントロールが生まれるまでは現在のムーミンパパがムーミントロールと呼ばれていたのです。
名前にまつわる豆知識は「ムーミンの彼女の名前は?」でも説明しましたので、ぜひ併せてお読みください。
では、そろそろ、今回のクイズを出題しましょう。
このキャラクターの名前は?
簡単すぎて二度見してしまったりして(笑)。
ご安心ください。ミムラの子どもたちの誰か……というような引っかけ問題ではありません。
正解は、リトルミイ。
もしかしたら、ちびのミイという名前が真っ先に浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。 小説の日本語訳では旧版でも新版でもちびのミイなのですが、キャラクター名としてはリトルミイが主流となりつつあります。
振り返れば、昭和アニメ『ムーミン』(フジテレビ系)ではシンプルにミイとだけ呼ばれていて、「ちいさなミイ」というエンディングテーマがありました。
平成アニメ『楽しいムーミン一家』(テレビ東京系)でもクレジットや作中の呼び名はミイ(キャラクター紹介ではリトルミイという表記も)。
新作アニメ『ムーミン谷のなかまたち』ではリトルミイ。第1話「リトルミイがやってきた」にはムーミントロールから「ミニミムラ」と呼ばれて怒って噛みつき、「リトルミイは名前で、見た目とは関係ない」と主張する場面が出てきます。
名前の由来についてはキャラクター紹介でもご紹介していますが、ミイというのはギリシャ文字のμ(ミュー)に由来する「いちばん小さなもの」という意味。
小説が書かれた原語であるスウェーデン語ではLilla My、フィンランド語ではPikku Myy、コミックスの原語である英語ではLittle Myと、どれにも「小さい」という単語が頭についています。
小説の日本語訳では、過去に、『ムーミン谷はおおさわぎ』(1965年発行/偕成社/矢崎源九郎訳)において、「おちびのミュー子」と訳されたことも(ちなみに同書でスナフキンの名前は「かぎタバコ屋くん」でした)。
リトルミイ=Little Myの表記は英語なのですが、英語圏での発音は実はリトルミイではなく、リッルマァイみたいな感じ。また、カタカナでの表記はミーでもミィでもなく、ミイです。ぜひ覚えてあげてくださいね。
萩原まみ(text by Mami Hagiwara)