(48)みんなの探しもの

あとで慌てたくない人たちは11月くらいから少しずつ、クリスマスプレゼントを買いためていく。この時期はまだ心に余裕がある。だからお店の人にプレゼントする人のことを話し、アドバイスを求める人も多い。お客さん同士が店員さんを介してアドバイスしあったり、あれこれとおしゃべりが続く。これが楽しみでムーミンショップに立ち寄ることだってある。知らない人同士がこんなに気さくに話をすることはフィンランドでは珍しい。さらに一日の大半が夜に思える11月はなんとも気が滅入りやすいので、いい気分転換にもなる。

今年は65周年でものすごい数の新しいムーミングッズが登場した。フィンランドのことなので、来年も続けて売られてるんだろうな...という気持ちはあるのだけれど、いや、でも唐突になくなるのもフィンランドだ。油断は禁物。さらにこの時期になって登場する65周年の商品まである。

クリスマスに向けて登場した商品でぱっと目に入った65周年の記念ものといえば、個人的にはムーミンすごろく。これは今までのと似ているようで違う。今回のものはトーベとラルス自身が描いたオリジナルすごろくの復刻版。本の挿絵に紙の素材や印刷技術を熟考するトーベのことだ、すごろくも本当によく考えられている。すごろくの地図が素晴らしくて、一瞬「あ、額装して飾りたい」と思ったのだけれど、これはテーブルや床の上において、ちゃっかり風に潜んでいる小さなキャラクターや絵を発見して心躍らせるようなつくりになっているのだ。

このすごろくの舞台はムーミン谷。ムーミンハウスがあって、ムーミンママがお客さんたちを案内した場所が描かれている。実はママのハンドバッグに穴が開いてて、案内の途中で大切なものを次々と落としてしまっていたのだ。みんなにも手伝ってもらって探し出したい。でも探しものは楽しい方がいい、ということでママが工夫して作った地図、それがすごろくの地図なのだ。

クリスマスプレゼントやらママのハンドバッグの中身やら、みんな探しものがある。実はここのところ、アドベントカレンダーすら「目をつむって指をさしたところを開ける」とか、お菓子が入っているものなんて平気で小腹の空き具合で3日分くらい開けてたり、ひどく勝手なことばかりしていたけれど、ひとつくらい探し物があってもいいかな、と思い始めている。ランダムに並ぶアドベントカレンダーの数字くらいはちゃんと探そうか。

森下圭子

 

ムーミンすごろく。ボードゲームはクリスマス休暇の過ごし方の定番。この時期よく売れる商品でもある。ちなみに「1回休み」などの指示が書かれたカードの絵も、トーベとラルスのすごろく用オリジナル。

アドベントカレンダー。今年はフィギュアをはじめ小さなプレゼントが毎日でてくるタイプも登場。