(87)大ムーミン会議
ムーミンメニュー。サンドイッチとパンケーキと手作りジャム、ベリーのジュースとコーヒー。残念ながら松葉は登場しませんでした
ふだんは子供たちのダンスや図工のレッスンで賑やかなヘルシンキ市の児童館。そこが大人たちの熱気でムンムンした2月27日の夕方。「食事のことがあるので予約してね」と言われていたイベントだ。大ムーミン会議、事前に予約するほどのムーミン好きが75人集まった。
この日会議に登壇したのはこのイベントでムーミンメニューを担当した人、ムーミンで博士号をとった研究者、トーベ・ヤンソン展のキュレーター、ムーミンを哲学的観点から捉えた本の著者、そして建築の教授。それぞれがそれぞれの分野でトーベを語ってくれた。
ムーミンメニューを前に「松葉はないんですか?」と、質問した人がいて会場が笑いに包まれる。確かに他の料理はどれも「フィンランドの定番」にすぎない。松葉こそがフィンランド人にとっても「ムーミンならではのご飯」ということだろうか。
有識者たちはムーミンハウスのモデルはどこだったかと持論を展開しようとしたけれど、それよりも建築の教授が話してくれた「ムーミン屋敷の図面が子供たちの遊びそのもので」という話のほうに聴衆は嬉々とした。建築家の描く図面ではありえない。でも子供たちが夢の家を描くそれと同じだというのだ。もともとは家の詳細がそれほど語られていない。読者が自由に想像できる余白をもたせながら、シリーズが進むにつれて、少しずつ家の中が明らかになっていく。その想像と発見の具合は、まるで探検しているようなのだ。いろんな有識者たちの話はもちろん面白かった。でも会場にいた人々は「なにが正解なのか」でなく、「どうやって一緒に楽しもうか」...そこに沸いたように見受けられた。
大会議の片隅で2時間ものあいだ、静かに編み物する女性がいた。名前を呼ばれて立ち上がった彼女が手にしていたのはスティンキー。誰かが自分なりのムーミンの楽しみ方を覚えて夢中になっているその様子はなんとも輝いている。自分なりの最高のムーミン遊びを手にした彼女の姿に、この日一番の拍手が送られ、そして会議が終了した。なんとも幸せな気分だった。
森下圭子
いま注目のムーミン編みぐるみ本。その作者の作品がこんな風に展示されています。アンナンタロのカフェで3月30日まで
所在地:Annankatu 30, 00100 Helsinki
http://annantalonkahvila.fi/
フィンエアーの日本便限定のエコバッグ。フィンランドでも人気の柄なのですが、この色はフィンレイソンのお店にもありません。
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