(29)踊るの、好きなんです

 
たくさんのムーミン原画が日本に旅立ち、ムーミン谷博物館では新しく「踊ろう!」をテーマにした展示が始まろうとしている。展示が新しくなるのは2年ぶり。本当に楽しみだ。「踊り」なんていわれると、なおさら。ムーミン谷は踊るの好き…ですよね。踊っている場面の挿絵をあれこれ思い出される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

文化や風習は、その地で培われた踊りを見れば見えてくる、という人がいる。そうかもしれない。フィンランド生まれの踊りといえば、前の人の肩や腰に手をかけてずーっと連なっていくジェンカ。タンゴもワルツもフィンランドで育まれると、なんとなくステップの変化の少ない(どのジャンルも同じに見えるくらいに)、音楽に合っているのか合ってないのかも微妙な、でもまったりと楽しそうに踊る…そんな印象がある。それってフィンランドを言い表しているような。またフィンランドではお祝いのたび、大きなパーティーのたびに踊る。そして楽しく踊れたお祝いは、すばらしい会だったねと絶賛され、人々の記憶にいつまでも残る。

トーベ・ヤンソンに近かった人たちが、ゴキゲンなときに踊りだすトーベの様子をしばしば語ってくれる。アトリエで開かれたパーティーの一場面ということもあれば、旅先や大自然の中でのこともある。そして彼女の踊り好きな姿は、8ミリフィルムにも納められている。ハワイでフラフラと、自由きままに歌いながら体をゆらすフラダンス。ロックな感じに島の岩(ロック)の上で踊る自由な即興の踊り。大自然の中で、自然の息吹に身をまかせ、一体になりながら踊る姿。ああ、だから自然の息吹と気分や感情を一本の線に溶け込ませてしまう、そんなムーミンの挿絵が紡ぎだされるのかな…なんてことをふと思ったりした。何年にもわたる、ざっくばらんな日常を収めたフィルムは、いくつかのドキュメンタリー映画として作品化され、フィンランドのテレビでは何度となく放送されている。

初めてそのドキュメンタリー作品をテレビで見たとき、私はまだヘルシンキ大学の学生だった。当時の同級生で今は国際的にも活躍している振付家の男の子は、この放送のあとすぐに電話してきた。そしてトーベの岩の上での即興ダンスが、いかに世界のコンテンポラリーダンス的に見て凄い踊りを踊っているか、えらく興奮しながら話してくれた。

作家として、画家として、さらにダンス芸術ですか?だ。なんでもトーベは親しい人たちの前では、踊りのパフォーマンスを行ったりしたらしい。島で暮らす様子、そこで本当に自由に踊る姿……是非このドキュメンタリー作品だけでも日本で紹介されたらいいのに……と思うのですが。

森下圭子

スウェーデンから届いた新しい商品。ガラスの花瓶です。花がなくても飾っておける?  奥に見えるのはショールーム・フィンランドの「スパ・セット」。

スタンプを集めてムーミンタオルを定価の半額で!というスーパーのキャンペーン。このムーミンタオル、確かに人気なんです。