ムーミンやしきに水道はある?【ムーミンクイズ】

ムーミン80周年のテーマは“The door is always open”doorとはムーミンたちが暮らすムーミンやしきの玄関扉のことです。カギをかけない習慣についてはブログ「ムーミンたちが扉を閉ざした相手は?」でもご紹介しましたね。
ムーミンやしきは単なる建物ではなく、物語の舞台であり、陰の主役と言っても過言ではないほどの存在。まるで生きたキャラクターのような魅力があって、グッズでも人気を集めています。

そんなムーミンやしきですが、作品によって設定や描写が異なり、はっきりしない点も多いのです。
謎のひとつが、水回り。そういえば、ムーミンやしきに水道はあるのでしょうか?

 

お皿はどうやって洗う?

コミックス12『ふしぎなごっこ遊び』で、ムーミンやしきの隣にきれい好きなフィリフヨンカが引っ越してきます。ムーミン一家がベッドの下に汚れたお皿を隠していると知って、フィリフヨンカはびっくり。
このときムーミンママは「汚れたお皿は次に雨が降るまでベッドの下に置いておく」と言っています。

フィリフヨンカの勧めでお手伝いさんを雇うことになり、ミーサがやってきますが、彼女がお皿を片づけようとすると「雨が降るまで溜めておく」と説明。
このミーサの絵はムーミンアラビアの食器でもおなじみですね。

 

水のない小屋の暮らし

お皿を雨で洗うと聞くと、「おばあさんは川へ洗濯に」という昔話のフレーズが浮かんできそうですが、実はそうでもないんです。

昨年の夏、トーベ・ヤンソントゥーリッキ・ピエティラ(トゥーティ)が夏を過ごした島、クルーヴハルに滞在する機会を得ました(詳しくはブログ「トーベとトゥーティが隠した贈り物」をどうぞ)。四方を海に囲まれた小さな島には井戸も川もないので、生活用水や飲み水はすべて船で持参します。ひとり1週間40リットルが目安とのことで、ふたり分で約80リットルの水を持っていきました。

クルーヴハルの小屋の室内にはストーブ兼用の薪オーブン(上の画像左)とガスコンロ(右)がありますが、流し台はありません。
では、洗い物をどうするかというと、小屋の外に持っていき、たらいに水を張って洗剤を入れ、ブラシで汚れをこすります。使うのは自然に優しい洗剤。日本の習慣だと洗剤が完全になくなるまで水ですすぎたくなりますが、そのためには大量の水が必要だと実感しました。ヨーロッパでは泡を洗い流さずそのまま乾かして使うのでびっくりした、というエピソードを見聞きしたことはないでしょうか。おそらくトーベたちも、少なくとも島においては、食器をきれいに洗い上げる習慣はなかったのではないかなと思います。

トーベたちが使っていた食器類は大切に保護され、現在は滞在者用に新しいものが用意されています。『島暮らしの記録』によれば、小屋が完成したのち、島で寝泊まりしていたのはトーベ、トゥーティ、映画『少女ソフィアの夏』でグレン・クローズが演じている母シグネの3人ぐらいだったにもかかわらず、食器の数が多くて驚きました(画像は一部で、大皿やボウル、スープ皿も)。一度に大人数が使うというより、まとめて洗うためだったのでしょう。

以前、「ムーミンママが苦手な家事は?」というブログを書いたことがありますが、不精だったわけではなく、雨にさらして汚れを落とすのは利にかなっているのだと知りました。

余談ですが、大きな誤算だったのは、わたしたちの滞在中、まとまった雨が降らなかったこと。また、風が強くて吹き飛ばされてしまう可能性があるため、夜中に雨が降りそうでも、たらいを出しっぱなしにしておくわけにもいかず。小屋の裏側には雨樋をつたってきた雨水を溜めておく青い樽があって、洗い物や洗顔に使えるだろうと期待していたのに、鳥の落とし物や屋根材の鉛などが混じっているため、用途が限られていました。

岩でできた島のあちこちに、水溜まりがありました。空の色が映ったり、風で波紋が起きたりと、とても美しかったものの、水苔が生えていたり虫が育っていたりで透明ではなく、手を洗うのもちょっとためらわれる感じでした。

家に水道がないなんて想像ができませんでしたが、実際に生活してみて、ムーミンやしきの謎のひとつが解けた気がします。トイレやお風呂については、また別の機会に!

 

ムーミンたちの使う水はどこから?

話をムーミンに戻して、小説の描写を見てみましょう。

小説『ムーミン谷の十一月』で、何かと仕切りたがるヘムレンさんから「家事は女の仕事」と言われて、気分を損ねたフィリフヨンカ(前出のコミックスのフィリフヨンカとは別人)。その様子を見たスナフキンはこんなふうに思います。

「皿洗いなんて、ただ小川の中にお皿をつっこんでばしゃばしゃやって、手もすすいで、ふいたあとの緑色の葉っぱを、ぽいとすてればいいだけじゃないか。」(新版『ムーミン谷の十一月』講談社刊/鈴木徹郎訳より引用)

台所でパーティーを開く前、ミムラねえさんが髪のお手入れをする場面。

「あたし、髪を洗うのに、雨水がいるのよ」
「あら、そう。川の水だっていいように思えるけれどね。そのまん中のバケツが雨水よ。あっちが井戸水だわ。でも、どうしてもというなら、雨水で髪を洗ってもいいわよ」(同)

ムーミン谷の地図を見てみると、ムーミンやしきのそばには小川が流れていて、井戸もあります。きれいな水がいつでも手に入りますから、バケツに汲んでおいて使い分けているのでしょう。ミムラねえさんが雨水にこだわった理由はわかりませんが、このあと水を火にかけて温めているので温度の差ではなく、もしかしたら川や井戸の水より雨水のほうが柔らかいなどの違いがあるのかもしれません。

 

ムーミンやしきに流しはある?

ムーミン小説の新版はより読みやすくなるよう訳語が見直されて、『ムーミン谷の冬』(講談社刊/山室静訳)にも細かな改訂がほどこされています。

冬眠から目覚めたムーミントロールが食べ物を探しに台所へ向かう場面。
旧版では「調理台の下からこちらを見つめている、二つの目に気がついて、ぎょっとしました」とあります。その生きもののことをおしゃまさん(トゥーティッキ)は「流しの下に住んでいる人」と呼んでいます。

一方、新版では「片づけ台」、「台の下の住人」。つまり「流し」という言い回しがなくなっているのです。
確かに挿絵を見ても、調理や片づけに使う台であって、水を流す仕組みはなさそうですね。

ちなみに、フィンランドで泊まった湖のほとりのコテージには水道は引かれていませんでしたが、キッチンには排水できる流し台がありました。飲み水や調理に使う水は井戸からタンクに汲んで、流し台の横の調理スペースに置いて使います。サウナや洗い物など、大量の水が必要なときは湖の水を使用。サウナのあと、シャンプーで髪を洗ったらそのまま湖にドボン!と飛び込んで流すのがフィンランド流だと教わりました。

 

あなたのムーミンハウスを作ろう!

さて、今年、フィンランドではキノ・ライカで写真展やコトカ海洋博物館でムーミン展など、関連イベントが目白押し! 日本では716日(水)から「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」が始まります。

現地に足を運ぶ醍醐味もありますが、世界中、家にいながらにして楽しめる大きな試みのひとつがマイ ムーミンハウス コンペティションです。絵や立体物、パフォーマンスなど、それぞれが思い描くムーミンやしきを作って、特設サイトに投稿。エントリーは430日(水)締め切りで、豪華賞品も用意されています。

何を作ったらいいか迷ってしまう方にはワークショップも各地で随時開催(終了していますが一例がこちら)。みんなが投稿した作品を見たり、シェアしたりすることもできますから、ぜひサイトをのぞいてみてください。

https://www.moomin.com/moomin80/competition

 

2025年のムーミンの日は?

トーベの誕生日89日をムーミンの日として日本でお祝いするのは今年で20回目!
振り返ってみると、絵手紙コンテストムーミンカフェメニュー開発コンテストなど、さまざまな形でムーミン愛を表現する企画が開催されてきました。読む、受け取るだけでなく、自分らしく何かを作り出す自由がある、それこそがムーミンの精神ではないでしょうか。

今年はいったいどんなことが? まだ発表されていないニュースもたくさんありますので、どうぞお楽しみに!

 

文と写真/萩原まみ(textphoto by Mami Hagiwara