(113)カフェの誕生、オペラの再演、冬のヘルシンキを楽しくするムーミンたち。
12月になり、ついにヘルシンキにもムーミンカフェが誕生した。コンセプトは子供のためのカフェ。子供が遊べるスペースを作って、大人も子供もゆっくりしようということらしい。遊具があり、本があり、そして子供サイズのテーブルと椅子がある。家で寛ぐように、靴をぬいでごろごろできる。そんな空間までおしゃれで、さらに大人たちが座るところも、たっぷりスペースを使っているので、寛げる。
トートやエプロンなどのムーミンカフェグッズはあるものの、パンにもケーキにも、ラッテにもムーミンはいない。窓のムーミンや遊具を見なければ、あくまでもおしゃれなカフェでゆっくりしている、そんな感じだった。窓が多くて店内が明るいので、話も弾みそう。
ムーミンカフェで寛いでいると、知人から電話があった。なんでもムーミンオペラを演出しているのだとか。
ムーミンオペラとは、着ぐるみのムーミンたちが、オペラを歌うのだ。もともとは1974年にこども向けのオペラを作ろうということになり、音楽家イルッカ・クーシストが作曲を手がけることになった。彼はトーベ・ヤンソンとやりたいと考え、そして直接トーベのところにお願いにいった。二人してピクルスを肴にウォッカを飲み、オペラの話をした。 返事はイエス。トーベ・ヤンソンはリブレットを書き上げ、そしてイルッカ・クーシストとのコンビでオペラが誕生した。当時、すべてのビジュアルはトーベが担当し、プログラムまでトーベがデザインしている。
オペラはその後、地方で何回か上演されてはいるのだけれど、ヘルシンキでムーミンオペラが上演されるのは、実は74年以来なのだ。
今回は国立オペラではなく、ヘルシンキコンサバトリー(音楽学校)とシベリウス音楽院のオペラコースの学生たちで上演される。これを演出するのはソビエト時代にモスクワでオペラの演出を学んだヴィッレ・サウッコネン。さらに彼は9歳のときに、ヘルシンキでムーミンオペラの初演も観ているのだ。オペラは6歳の頃から親しんでいたのだとか。
初めての通し稽古の日。ムーミン一家が初めて着ぐるみ着用で演じた日に、見学させてもらった。ムーミンバレエの振付師から聞いてはいたけれど、鼻の距離感がつかめずに、ぶつかってしまう。ところが、さすがオペラの学生とオペラの衣裳さんだ。着ぐるみの頭越しというのに、きれに声が通るのだ。ちなみに芝居の人たちは相当苦労していて、マイクをつけたり、頭をはずすとか、いまだに試行錯誤が繰り返されている。ヴィッレに言わせると、オペラは相当な声量なので、頭のなかで自分の声がこだましたり、周囲の音が聞き取りにくかったり、着ぐるみの網目から周囲の様子や合図を見るのは極めて困難で、大変だろうとのことだった。
今回の舞台美術は74年のものとは違う。トーベの挿絵のあれこれを、舞台美術に再構築させている。作曲とリブレットはほぼ74年と同じだが、少しだけヴィッレのアイデアで音楽が足されている。
『ムーミン谷の夏まつり』を下地に使ったオペラなので、言葉があまり理解できなくても、なんとなくストーリーはつかめるのではと思う。こちらは1月27日に初日を迎える。
ムーミンカフェのサイトはこちら
http://muminkaffe.com/
ムーミンオペラ(1月27日~2月6日)についてはこちら
http://www.konservatorio.fi/fi/konsertit/muumiooppera
予告動画はこちらから
(撮影が行われた劇場は1974年に上演された当時の国立オペラハウス。今回のムーミンオペラはヘルシンキコンサバトリーのコンサートホールで上演される)
森下圭子