(119)ムーミン美術館がついにオープン!
トーベ・ヤンソンはタンペレ市に対し、ムーミンの原画を中心に2000点ほどの作品を寄贈する際、いつでもムーミンの原画がみられるようにすることを条件にしていた。タンペレ市はちょうどオープンするところだった中央図書館の地下の書庫が美術館にできるとし、そこを美術館にした。そのムーミン谷博物館から30年。ついに仮暮らしでなくなったのだ。トーベ・ヤンソンの原画とパートナーでグラフィックデザイナーのトゥーリッキ・ピエティラが制作した立体模型を展示するための、ムーミンの世界観を表現するための美術館が誕生した。名前も新しくなり、ムーミン美術館として6月17日オープンとなった。
オープンして、さっそくメディアが次々とムーミン美術館のようすを伝えている。多くのメディアが、「美術館」を強調する。それは遊びの要素がとても多いからだ。でもここは遊園地ではない。
薄暗い美術館を歩いていくと、ひたひたと音が聞こえてくる。さらに突然「ヒューン」と音が走り去っていく。これは彗星でしょうか…壁には様々なフレームで額装された原画、立体模型などが、ものがたりごとにまとまっている。一冊一冊のムーミン本の世界が、音、原画、立体模型、ストーリー、解説と立体的に紹介されている。トーベの絵のことや人生のこと、立体模型を眺めながらその場面にふさわしい本の抜粋を聞くこともできる。ちなみにスウェーデン語はすべてトーベ・ヤンソンが朗読している。
飛行おにの帽子の中にはいると、自分の影から枝が生えたり耳がのびたり、影がどんどん姿を変えていく。かと思えば、壁に僅かに動くニョロニョロが映し出されていて、雲に触れると稲光がニョロニョロを直撃する。とある階段で、は姿の見えない女の子ニンニが、ぴょんぴょんぴょんと階段を降りながら、少しずつ姿を現す様子が映し出されたり、別の壁ではムーミンが嬉しそうに駆けていく。
体感型美術館とは?と楽しみにしていた美術館。思った以上にムーミンの世界にとっぷり浸れる場所になっている。もし美術館を予定されている方がいらしたら、一日タンペレにいるくらいで計画を立ててくださいといいたいくらい。
実はムーミン美術館へ一番乗りしたのはオフィシャルムーミンツアーだったのだけれど、フィンランドぽいなあと思うのは、日本からムーミンのファンが来てくれた!しかもグループで!ということが次々とニュースに取り上げられたことだ。ムーミン美術館がはいっているタンペレホールのトップも、グループ写真をとってる私たちのところへやってきて、写真を撮らせて!と記念写真を撮っていかれたり。
美術館のにぎわいはもちろん、この週末、美術館のオープニングは市をあげてのお祭りになった。タンペレホール内はもちろん、そばのソルサ公園も、無料のイベントもたくさんあって、老若男女、とくに小さな子ども連れの家族が次々とやってきていた。科学遊びとか、体操とか、ムーミンと関係ないものもある。いえいえ、ただピクニックを楽しんでいる人たちだっている。ソルサ公園のムーミン像も、お祭りの中にいて楽しそうだった。
次の大きなお祝いはトーベ・ヤンソンの誕生日でもある8月9日。ガーラコンサートと、特別展のオープニングが控えている。
今月は長いですが、もうひとつ。
6月から『ムーミンパパ海へいく』の灯台の島のモデルになったといわれるソーダーシャールの灯台の中で、トーベ・ヤンソンの作品が展示されている。こちら、実は初公開の作品が並んでいるのだ。トーベ・ヤンソンの母方の叔父さんがトーベに描いてもらっていた航海日誌の表紙や挿し絵が展示されている。トーベが自分の署名として使っていたムーミンの姿をしたトロールの絵もついていたり。こちら、来年はまた展示の作品を替えるかもしれないとのこと。そのほかトーベ・ヤンソンの写真やムーミンの挿し絵なども(こちらは複製と思われる)展示されている。
さらに6月にはいり、ムーミンワールドもシーズン開幕!そうそう、今年はムーミンワールド内だけでなく、ムーミンワールドの島があるナーンタリの街なかにムーミンワールドのカフェがオープンしている。ここには平成ムーミンのセル画が展示されているとか。
今年はトーベの記念年ではないけれど、なかなか賑やかです。
森下圭子