(18)船のようなアトリエハウス その2

そうか、船みたいなんだな。そんな風にアトリエを眺めていると、住居としては不便そうに見えていたのが楽しそうにみえてくる。バラライカがあったり、ムーミン一家が船にのった影絵に使うようなプレート。仮面舞踏会を彷彿させるキラキラしたお面もある。トーベと親しくしていた人たちが語る、そこで繰り広げられたお祝いやパーティーの様子は、その楽しさがリアルに伝わってくるものばかりだし、話してる本人たちも思い出し笑いしてしまっている。

船の寝床よりもひっそりしているロフトの寝室。そこには折り紙の本があったり、世界各国のお人形が飾られている。その他にも人からプレゼントされたらしい手づくりのムーミンが棚に並んでいる。素朴で思わずフフフと顔がゆるんじゃうような、味わい深い個性的なムーミンがいっぱい。そうそう、それから本人が薬のビンに白い紙を貼ってミィの絵を描いているようなものだってある。このアトリエハウスがあるアパートの屋根裏は物置部屋になっていて、アパートの住人たちが共同で使っているところだけれど、そこの梯子や窓枠にいたずらっぽくムーミンを描いてムーミンに大冒険させてあげていたトーベ。ムーミンたちは決まって薄暗いところにいる。でもその暗さが自分の世界に入り込ませてくれるようで、自分とムーミンたちの間で心躍らせる楽しい時間を紡いでくれるようでもある。

会議などで使われる今ではトーベがいた頃の状態を基本的には残していながらも、アトリエに大きな新品のテーブルが置かれたりランプを増やしたりして、明るいすっきりした感じになっている。アパートの屋根裏は住宅に変身してしまった。それでも船仕様ぽいあちこちが、船の中の薄暗い感じを思わせ、そんな薄暗がりの中では、ムーミンたちが今でも潜んでくれている。

フィンランドでは5月が「ムーミン月間」。特別なイベントはないけれど、先月から映画館でポーランド製のパペットアニメーションが上映されているし、今年のムーミン月間は個人的に盛り上がりをみせている。

森下圭子

ヘルシンキでお買い物ストリートといえばここ。そんなエスプラナーデ通りにあるイッタラのコンセプトショップ。スノークのお嬢さんのこんな大きな姿を見る日が来るなんて。お嬢さんの足元には本物の砂。潮の香がぷんと漂ってきそうなかわいいディスプレイ。
ムーミンといえばフィンランド航空だけど、船ならシリアライン。オフィスのカウンターにはこんなDVDが「ご自由にお取りください」と置かれていた。子供たちに人気のアニメ4作品の1番目がムーミン。ここにはパペットアニメ版が収められている。