2023年は卯年! ムーミンのお話にうさぎは出てくる!?【ムーミン春夏秋冬】
2023年最初のブログ「ムーミン春夏秋冬」をお届けします!
例年、干支にちなんだムーミンのお話をご紹介しているのですが、2023年は卯年。そういえば、うさぎって見かけたことがないような……?
と思ったら、ムーミン公式オンラインショップPEIKKOのノベルティ「布だより」にうさぎの姿が!
これはいったいどんな場面なのでしょう?
うさぎが登場するのはどんなお話?
調べてみると、1960年発表の第25話「Moomin and the Circus」にうさぎが登場していることがわかりました。
日本語版は「サーカスがやってきた」というタイトルで、ムーミン・コミックス第9巻『彗星がふってくる日』 (冨原眞弓/訳 筑摩書房/刊)に収録されています。
ひょんなことからサーカスのステージに立つことになったムーミンたち。ムーミンパパは帽子からうさぎを出すトリックに挑戦!
ところが、帽子から飛び出すはずのうさぎがなぜか頭の上に(笑)。
「布だより」にはパパの頭の上でニンジンをかじるうさぎの絵が使われています。
木の後ろからうさぎをのぞくムーミントロールの絵は第22話「Moomin's Lamp」(第12巻『ふしぎなごっこ遊び』収録「ムーミンと魔法のランプ」)から。
原作ではお腹をすかせたムーミントロールとスノークのおじょうさんが追いはぎ(!)をしようと隠れている場面で、うさぎは出てきません。
この2作、あまり有名なエピソードではないかもしれないのですが、実は作者はトーベではなくラルス・ヤンソン。
トーベが手がけた最後のコミックスは1959年発表の第21話「Fuddler's Courtship」(第5巻『ムーミン谷のクリスマス』収録「イチジク茂みのへっぽこ博士」)ですから、22話は初めてのラルス単独作品です。
風刺とユーモアがラルスの持ち味で、連載が続くにつれてシンプルな絵柄へと変化していきますが、このときはまだトーベの作風を忠実に踏襲していることがわかりますね。
ラルスの作品をもっと読みたい方には『英語対訳 ムーミン・コミックス』 がおすすめです。
コミックスで描かれた動物たち
トーベが動物を描いたコミックスで代表的なのは、虎(寅)、蛇(巳)、猿(申)といった干支の動物もたくさん登場する「ジャングルになったムーミン谷」(ムーミン・コミックス第3巻『ムーミン、海へいく』収録)。
スティンキーがサーカスから動物たちを逃がしてしまうお話で、先述の「サーカスがやってきた」はそれを踏まえたストーリーになっています。
コミックス他作品にはイノシシ(亥)、ねずみ(子)、牛(丑)の姿も。
トーベと家族が飼っていた動物は?
実際にトーベ自身と関わりの深かった動物といえば、父ヴィクトルの飼っていた猿のポポリーノが挙げられます。
自選短篇集『メッセージ』に「猿」という作品が収録されているほか、自伝的小説『彫刻家の娘』では写真も見ることができますよ。
大人になってからはパートナーのトゥーリッキ・ピエティラとプシプシーナと名付けた黒猫を可愛がっていました。
猫や犬といった実在の動物だけでなく、ムーミンをはじめとする空想上の個性的な生きものたちを生き生きと描き出したトーベ。
なぜうさぎを登場させなかったのか、少し不思議な気がしますね。
そういえば、2022年末にオープンしたMOOMIN SHOP GINZAのオリジナル商品には、こんなワニの絵が使われています。
これは短編集『ムーミン谷の仲間たち』収録の「しずかなのがすきなヘムレンさん」の一場面。
ムーミンバレーパークのヘムレンさんの遊園地のモチーフにもなったお話です。
では、2023年もムーミンといっしょに楽しい思い出をいっぱい作ってくださいね!
文/萩原まみ(text by Mami Hagiwara)