「エンマの劇場」のエンマって誰?
ムーミンバレーパークに行ったら絶対に見逃せないのが、「エンマの劇場 Emma teatteri (エンマ テアッテリ)」で行われるライブエンターテインメント! 予約も追加料金もなしで楽しいショーが見られるとあって、子どもたちはもちろん大人にも大人気。現在上演中の「たのしいムーミン一家~春のはじまり」は人気キャラクター総出演で、何度見ても飽きません。毎回、ライブの演技ですから、同じ演目でも、そのときのスナフキンがどんな表情を見せてくれるのか、客席の間を歩くちびのミイがどんなアドリブを聞かせてくれるのか、ムーミントロールたちのしぐさのひとつひとつ、見どころ満載なんです。劇中歌「雲にのれたら」の振り付けを予習していければ、さらに盛り上がること間違いなし!
雨天や荒天の場合は、キャラクターたちといっしょに写真を撮ることができるグリーティングなど、内容が変更されることも。それはそれで貴重なチャンスなので、天候が悪いからといってがっかりせず、ぜひエンマの劇場に足を運んでくださいね。
でも、「エンマの劇場」のエンマって?と不思議に思っている方もいらっしゃるのでは? そこで、今回、8月第5週のブログ「ムーミン春夏秋冬」番外編では、エンマの謎を紐解いてみます。
エンマは、小説『ムーミン谷の夏まつり』(講談社刊/下村隆一訳、畑中麻紀翻訳編集)に出てくるキャラクターです。
ムーミン谷が洪水に見舞われ、ムーミンやしきも水に浸かってしまいました。ちょうどそこに流れてきた不思議な家に移り住むことにしたムーミンたち。謎だらけの家で食卓を囲んでいると、不機嫌そうな顔をした、灰色でしわくちゃなものが現れました。それは年とった劇場ねずみで、「わしは、エンマという名まえじゃ」と名乗りました。そして、その建物は家ではなく、劇場だと告げたのです。掃除好きのエンマは、舞台監督だった夫のフィリフヨンクが亡くなってから、ひとりで劇場を守ってきました。劇場のことを何ひとつ知らないムーミンママたちに呆れながらも、舞台の仕組みやお芝居のやり方について、教えてくれることになるのです。
「劇場ねずみ」という言葉の解釈ははっきりしないのですが、エンマの種族はねずみではなく、フィリフヨンカのようです。夫はフィリフヨンクですし、その姪はフィリフヨンカ。エンマの見た目や、きれい好きでこだわりが強い性質も、フィリフヨンカ族の特徴を感じさせます。
彼女の挿絵はこの1点だけで、『ムーミン谷の夏まつり』にしか出てこないにもかかわらず、エンマとその劇場の存在感は絶大。フィンランドのムーミンワールドにも「エンマ劇場」というライブシアターがありますし、新作アニメ『ムーミン谷のなかまたち』第5話「黄金のしっぽ」にも顔を出していますよ。
ムーミンバレーパークに話を戻しますと、展示施設コケムス内にもエンマの劇場をモチーフにしたスポットがあります。写真では見切れていますが、左側のボートに乗ってホムサやミーサの気分で写真を撮ったり、手前の仕掛けで驚きの演出を楽しんだり、こちらもどうぞお見逃しなく!
もちろん、原作を読んで背景を知れば、エンマの劇場やムーミンバレーパークがもっともっと楽しめます。ムーミン谷の短くも素晴らしい夏を描いた『ムーミン谷の夏まつり』は、新版が発売されたばかり。まだまだ厳しい残暑の日々、夏休みを堪能した方にも、まだまだ夏が終わってほしくない~!という方にも、おすすめの一冊です。
ムーミンバレーパークは9月1日まで、夏季営業として朝9時から開園(通常は10時~)、エンマの劇場のショーは1日4回(10:30/12:30/15:30/17:30。9月2日からは1日3回)開催。この夏、最後の思い出づくりに、ぜひお出かけくださいね。
萩原まみ(文と写真)