ムーミン谷のおばけたち【ムーミン春夏秋冬】
今年もハロウィンの季節が到来。
この時期、あちこちでおばけのモチーフを目にしますね。
ムーミンの原作小説とコミックスには、何人かのおばけ(ユーレイ)が出てきます。
ムーミン×メリー ハロウィン限定商品のパッケージには、デコレーションケーキを前にわくわくした表情のおばけと、とんがり帽子にベールをつけたあまり知られていないレアキャラが!
今回はこのふたりのおばけに注目してみましょう。
ふたりのおばけが出会うコミックス
これは1961年にラルス・ヤンソンが発表した第28話「Moomin and the Farm」。
実は、全14巻のムーミン・コミックス(筑摩書房刊)には収録されていません。
(ラルスとコミックスについては「もうひとつのムーミンの原点、コミックスの世界」をどうぞ!)
そのため、未読の方も多いかもしれないのですが、うれしいことに2020年発売の『英語対訳 ムーミン・コミックス』で「ムーミンパパ農園主になる」として訳出、日本語で読むことができます。
ある日、突然、存在すら知らなかったいとこが亡くなったと告げられ、大きな邸宅と農地を相続することになったムーミンパパ。
家族を連れて新しい生活を始めましたが、農場の暮らしは想像以上に大変でした。
お腹を空かせた家畜の世話、慣れない農作業、しかも家のなかには口うるさい幽霊が住みついていたのです。
古めかしい口調で何かと指示を出してくる幽霊の名前はデイム・エレイン。
エレインの気を逸らすため、ムーミンママはムーミン谷に住むユーレイに手紙を書いて呼び寄せることにしました。
エレインとユーレイは意気投合しますが、エレインはかえって張り切りだしてしまいます。
そして、予想外の(いえ、お約束のような?)オチが……。
続きはぜひ『英語対訳 ムーミン・コミックス』を読んでみてくださいね。
個性ゆたかなおばけたち
ちなみに、この「ムーミンパパ農園主になる」にはチョコレート缶とまったく同じ場面はなく、ケーキもリトルミイも登場しません。
ユーレイがひんやりしたケーキを好むという逸話が第9巻『彗星がふってくる日』にありますので、農場にやってきたユーレイは彗星に怯えていたユーレイと同一人物なのかも?
ムーミンのお話で描かれる個性的なおばけ(ユーレイ)たちについては「おばけの意外な趣味って何?」でも解説しています。
その冒頭でも取り上げましたが、おばけと聞いてムーミンファンがパッと思い浮かべるのは、小説『ムーミンパパの思い出』でしょう。
映画でもおばけに会える!
12月29日(金)から公開予定の映画『ムーミンパパの思い出』にもおばけの姿が!
© Filmkompaniet / Animoon
この映画は、トーベ・ヤンソン自身が監修し、1978~82年にポーランドで製作・放送されたテレビシリーズ「ムーミン・パペット・アニメーション」を素材として、新たに構成された新作。
『楽しいムーミン一家』の声優陣が再集結したことでも話題を集めていますが、おばけはどんな声でしゃべるのか、どんなふうに描写されているのか、公開が待ち遠しいですね!
萩原まみ(text by Mami Hagiwara)