2024年は辰年!【ムーミン春夏秋冬】
あけましておめでとうございます。
2024年のムーミンブログ第1弾は、今年の干支、辰=竜をテーマにお送りします。
竜が登場する2作
竜が出てくる原作小説といえば、パッと2つの作品が浮かぶのではないでしょうか。
まずは現在公開中のパペット映画の原作でもある『ムーミンパパの思い出』。大きな竜のエドワードがここぞ!というところで活躍(?)します。
© Filmkompaniet / Animoon
原作小説の表紙の真ん中にもエドワードらしき姿が。
もう1作は『世界でいちばん最後の竜』(『ムーミン谷の仲間たち』収録)。タイトルどおり、この世から消えてしまったと思われていた竜の子をムーミントロールが発見する短編です。
こちらはまた近々改めて詳しくご紹介するとして、今回はエドワードをクローズアップしてみたいと思います。
『ムーミンパパの思い出』の意外なキーキャラクター?
ムーミンパパが若い頃の冒険を回想し、子どもたちに語ってきかせる『ムーミンパパの思い出』。
みなし子ホームを抜け出したムーミンパパは、発明家のフレドリクソンと出会います。フレドリクソンはちょうど、みずから設計を手がけた船「海のオーケストラ号」を完成させたところでした。
フレドリクソンの甥のロッドユール(スニフのお父さん)がペンキを塗って、船を仕上げています。この場面もパペット映画でとてもかわいらしく描かれていますから、注目してみてください。
手前で寝ているのは、ヨクサル(スナフキンのお父さん)です。
いざ、出航!となったとき、大きな問題に直面します。陸地で造った船はどっかりと座り込んだまま、まったく動こうとしなかったのです。
どうやって船を水辺まで運ぶのか? フレドリクソンの脳裏に閃いたのは、巨大な竜のエドワードの力を借りることでした。
巨体ゆえにうっかり誰かを踏みつぶしてしまうと、一週間は泣いて、お葬式代を払うという、怖いような憎めないようなキャラクターです。
フレドリクソンは、毎週土曜日に海で水あびをするのが習慣のエドワードに、川で水あびをしてはどうか、川底は柔らかで気持ちがいいよ、と提案します。
エドワードがどっかりと腰を下ろすと、たちまち川の水があふれ、船を押し流しました。
迫力満点のこのシーンは、パペット映画『ムーミンパパの思い出』や、ムーミンバレーパークのアトラクション「海のオーケストラ号」でもドラマティックに描かれています。
© Filmkompaniet / Animoon
川底は柔らかい砂地だと言われて飛び込んだのに、実はゴツゴツの岩だらけ。怒るエドワードから逃げるように、船は川から海へと滑り出し、冒険の旅が始まりました。
怖い? 頼れる? エドワード
ムーミンパパがヘムレンおばさんをモランから救ってしまったり、ニブリングの群れと遭遇したり、大きな嵐を乗り越え、不思議な雲に持ち上げられて、ようやく陸地が見えてきたとき、頭上から雷のようなエドワードの声が……!
パパたちはどんなふうにエドワードをなだめたのでしょうか? また、物語の終盤、フレドリクソンが潜水艇に改造したオーケストラ号がおそろしい怪物うみいぬに遭遇したとき、エドワードが果たした役割とは? 続きはぜひ原作をどうぞ!
エドワードの名前の謎
さて、エドワードについてもう少し掘り下げてみましょう。
エドワードにまつわる謎といえば、その名前。原語のスウェーデン語ではDronten Edward。Drontも、フィンランド語のDronttiも、かつてモーリシャス島に生息し、絶滅してしまった飛べない鳥のことを指します。
でも、エドワードはどう見ても鳥ではなく、竜か恐竜ですよね。
英語のBooble Edward(Edward the Booble)のBoobleには「まぬけ、お人好し」といった意味があるそうです。
そもそも、ドードー鳥の名の由来がポルトガル語で「のろま」の意味だという説もあるので、「おまぬけエドワード」というようなニュアンスの命名だったのかもしれません。
絵本にもエドワードが?
絵本『さびしがりやのクニット』には、網で魚をつかまえようとしている大きな生きものが出てきます。
帽子をかぶって、洋服を着ており、竜というより巨人のような姿。
このキャラクターの名前は渡部翠さんの旧訳ではドロンテ=ドードーとされてきましたが、新版でドロンテに改められました。
コミックスにもよく似たエピソードが!
また、コミックスにも、小説とよく似たシチュエーションの描写があります。
「ムーミン、海へいく」で、フレドリクソンではなく、トゥーティッキの指導のもと、船を建造したムーミンたち。小説同様、どうやって水に浮かべるか?という問題を解決するためにトゥーティッキが呼んだのはドードーのエドヴァルド(英語ではMR EDWARD、BOOBLE)。
帽子をかぶっていて、どちらというと絵本に近い見た目ですね。
竜のエドワードとはあまり似ていませんが、ストーリー展開としては小説との類似点が多数。
2024年はトーベ・ヤンソン生誕110年
このように、小説、絵本、コミックスと、さまざまな形で物語を紡ぎ、大人向けの小説や絵画など、たくさんの作品を残したトーベ・ヤンソン。
2024年はトーベ生誕110年にあたる年です。イベントや記念グッズなど、どんなスペシャル企画が待っているのか、わくわくしますね! 情報は随時こちらでお知らせしていきますので、今年もどうぞムーミン公式サイトをよろしくお願い申し上げます。
文/萩原まみ(text by Mami Hagiwara)