バレンタインは友情の日【ムーミン春夏秋冬】
2024年、辰年もひと月が経ちました。
先月のブログ「2024年は辰年!」では、辰=竜をテーマに『ムーミンパパの思い出』に出てくる大きな竜のエドワードをクローズアップ。その際、竜が登場するムーミン原作小説にはもう1作『世界でいちばん最後の竜』(『ムーミン谷の仲間たち』収録)があるとお伝えしたとおり、今月は小さい竜に注目してみたいと思います。
というのも、2月の大きなイベントといえば、2月14日のバレンタインデー。
日本では主に女性から男性にチョコレートを贈り、愛の告白をする日として普及しましたが、今では友だち同士で交換する友チョコ、自分自身へのご褒美チョコなど、広がりを見せています。
フィンランドではバレンタインデーはYstävänpäivä(友だちの日/友情の日)と呼ばれ、お花やお菓子などをプレゼントするそうです。
ムーミントロールが見つけた小さな竜
『世界でいちばん最後の竜』は、友情について多くのことを伝えてくれる珠玉の一篇です。
ある日、大きな水たまりで遊んでいたムーミントロールはふしぎな生きものをつかまえます。ガラス瓶をすかしてみると、それはまばゆく輝く小さな竜でした。
すでにこの世から姿を消したと思われていた幻の竜を発見したムーミントロールは有頂天。このすばらしい秘密を最初に分かち合うのはスナフキンしかいないと、こっそり部屋に連れて帰ります。
秘密の匂いを敏感に嗅ぎつけたちびのミイ(リトルミイ)。見守るムーミンママとムーミンパパ。そのあたりの繊細な描写も秀逸なので、ぜひ実際にお読みいただきたいのですが、ここではざっくりとあらすじをご紹介していきましょう。
まずは竜と仲良くなってからスナフキンに披露しようと考えたムーミントロールでしたが、気まぐれで独立心旺盛な竜の子はなかなか懐いてくれません。
それどころか、スナフキンを連れてくると、ムーミントロールよりもスナフキンのほうを気にいってしまったのです。
窓辺に飛んでいって、去りゆくスナフキンの後ろ姿をじっと見つめつづける小さい竜。その姿を目にしたムーミントロールのとった行動、竜の行方とスナフキンの計らいとは……?
三者三様の気持ちが丁寧に綴られていて、さまざまな読み方ができ、繰り返し読んでも新しい発見のある作品。短編ですから大人の方には原作をおすすめしますが、ギフトやお子さま向けにはカラー絵本『ムーミントロールと小さな竜』もありますよ。
アニメでの描かれ方
このエピソード、アニメで観たという方も多いかもしれません。
1990年から放送された『楽しいムーミン一家』では第13話「地球最後の龍」としてアニメーション化されています。
ムーミントロールがわくわくしながら「龍を見たことある?」と問いかけると、スナフキンは「あるわけないよ」と答えます。続けて口にしたのが「ぼくはこの目で見ないものは信じない。そのかわり、この目で見たものはどんなにばかげたものでも信じるよ」というセリフ。
そして、ムーミントロールの部屋の天井に留まった龍を見つけると「ぼくは信じるよ」と呟くのです。
スナフキンの言葉として見かけるこのフレーズは、小説やコミックスではなく、平成アニメが出典だったのですね。
龍は世話を焼こうとするムーミントロールの耳に噛みつき、スナフキンの肩で安心したように眠ってしまいます。その様子を見たムーミントロールはさみしそうな表情で「ぼくには肩がないからな」とひとこと。原作に忠実ながらも、アニメならではの演出が光ります。
最新TVアニメシリーズ『ムーミン谷のなかまたち』だと、シーズン1第3話「世界でいちばん最後の竜」。新しい技術によって、竜の姿がとても美しく映像化されています。
あの手この手でなんとか秘密を暴こうとするリトルミイのコミカルな場面、それを優しく押しとどめるムーミンママの姿も必見。ぜひ配信やBlu-ray&DVDでご覧になってみてくださいね。
ムーミンにみる友情
ムーミンの物語において、友情はひとつの重要なテーマです。
昨年末に公開されたパペット映画の原作『ムーミンパパの思い出』(講談社刊/小野寺百合子訳)で、若き日のムーミンパパはフレドリクソンという友人を得たことで「これから本当の意味でのわたしの人生が始まる」と述べています。
同作でムーミンパパはロッドユール(スニフのお父さん)ヨクサル(スナフキンのお父さん)といった仲間たちと共に一生の宝物となる冒険を経験、おばけとも友情を育みました。
ほかにも、『ムーミン谷の彗星』では、ムーミントロールが友人のスニフと旅に出て、スナフキンと出会います。
『ムーミン谷の夏まつり』で、ずっとひとりぼっちで夏まつりを過ごしていたフィリフヨンカはたまたま訪ねてきたムーミントロールとスノークのおじょうさんと知り合い、外へと一歩踏み出します。
『ムーミン谷の冬』で冬眠から目覚めてしまったムーミントロールをさりげなく見守り、支えてくれたのはトゥーティッキ。
『ムーミンパパ海へいく』のムーミントロールと孤独なモランの交流、『ムーミン谷の十一月』でムーミンやしきに集まったものたちのゆるやかな共同体のあり方も、友情のバリエーションといえるのではないでしょうか。
ムーミントロールとスナフキンの友情はコミックスでも描かれていますし、アニメ作品のなかでもとりわけ最新作の『ムーミン谷のなかまたち』ではより複雑な意味合いを持たせた独自の解釈がなされています。
今年のバレンタインは?
さて、バレンタインといえば、やはり日本では甘いお菓子がつきもの。
大注目のムーミンショップ パティスリーに、毎年大人気のMOOMIN×メリーチョコレートコラボ、今年はフィンランドを代表するFazerの特別パッケージも発売。ついつい自分用にも買いたくなりますね!
MOOMIN SHOP ONLINEではギフトにぴったりなアイテムやラッピンググッズを揃えたバレンタインフェアを開催中。
ムーミンバレーパークのイベント「LOVE~大切なあなたと」ではかわいいフォトスポットや花火、スナフキンとのコーヒータイム、限定メニューなど、楽しい企画が盛りだくさんです。
まだまだ寒い日が続きますが、ムーミンたちがあなたの心を温めてくれることを願いつつ。
文/萩原まみ(text by Mami Hagiwara)
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